オリジナル『仮面ライダーダルク』

□第1話「契約」
2ページ/7ページ




第1話「契約」


西暦2045年、五月。
ゴールデンウィークもあけて、新年度が本格化する時期。

東京都と神奈川県の境に位置する“聖上市”にある、ここ“聖ミロンド学園”も、先月入学した新入生達が新しい環境に慣れてくる頃。


この学校の寮から校舎へ向う女子生徒。
制服である赤いブレザーにミニスカート、黒く腰まで長い髪を揺らしている。

彼女は目の前に見える生徒を、後姿で友人と判断、名前を呼ぶ。

「お〜い、千代〜!」

呼ばれた少女、ポニーテールを結ぶ黄色い大きなリボンが特徴的な彼女。
“前澤千代(まえざわちよ)”は、気付いて振り返る。

「あ、美月ちゃん」

呼んだ少女“上城美月(かみしろみつき)”が駆け寄り、隣に並ぶ。

2人は同じ1年1組で、隣の席同士。
入学当日に仲良くなり、毎朝一緒に登校している。
尤も、千代は自宅通いなのだが。

下足置き場に付くと、

「美月〜千代〜おはよ!」
「2人共やっほ〜!」

同級生の女子達が次々に挨拶してくる。
その都度、決まって千代は頭を撫でられる。

「相変わらず可愛がられるわね」
「はぅ〜恥ずかしいよぉ////」

美月と千代を比較するなら、

美月は少し強気な美人、
千代は愛玩動物の様な美少女、

千代の可愛さにあてらる生徒は着々と増えている。
彼女の背の低さもその一因の様だ。


2人が自分達の教室に着く、20数名全員女子。

この聖ミロンド学園は、数年前まで女子高で、今は共学である。
が、それまでのイメージと、ここに通う条件等の所為か、男子は殆どおらず、
1学年に1人か2人しかいないのだ。


自分の席について、鞄の中身を整理する。

「ねぇ、今日転校生が来るんだって」
「へ?この時期に?」

美月の後の生徒が突然言い出し、頭に疑問符が浮かぶ。
先月入学式があったばかりに転校生とは、不可解に思える。

「ねぇねぇ、男子かな?」
「なわけ無いでしょ」

ありえない、と軽くあしらった。
この学校の環境で男子が転校するのは考えにくい。
美月の中でも、この学校の男子は、生徒会役員1人ぐらいしか出てこない。


「みんな、席について!」

担任の“マリア=ケント”が入室し、生徒達を席に着かせる。

「今日は、このクラスに転校生が来ています。みんな仲良くしてね」

今朝からの話題、そこまで驚く事も無く、皆は返事をする。
が、直後にどよめく事になる。


「さぁ、入ってきて」

やって来た転校生は、

男子だった。
耳までの長さで若干癖がある黒紫色の髪、顔立ちは端整で身長は平均以上と言える。

学校鞄の他に、細長い鞄を持っているが、最早気にならないぐらい、生徒達は興奮していた。

「今日からこの学校の生徒になる“天蒼輝(てんそうあきら)”君よ。天蒼君、みんなに挨拶して」
「天蒼輝です。苗字が変だから、輝って名前で呼んでください」

よろしく、頭を下げて挨拶すると、
きゃぁ〜!と黄色い声が響く。

全校生徒の約8割が寮生活をし、男子とはあまり縁のない環境、
年頃の女子には、この上ない男子アイドルの登場の様なものだ。

そんな中、美月は他ほど反応はしていない。
冷静に色々考えていた。

「輝君はずっとアメリカに住んでいて、色々分からない事も多いから、助けてあげてね。じゃあ、輝君の席は・・・彼女、美月さんの隣ね」

マリアが指した席は、美月の―千代とは反対の窓際の―隣の席だった。
全体の視線が美月に集中、殆どが羨望の眼差し。

反応が遅れ、キョロキョロしていると、輝は席について荷物を床に置く。

「よろしく」
「え、ええ。ねぇ、あんた何者?こんなタイミングに転校ってある?」

簡単な挨拶早々に、美月は小声で質問する。
面を食らった様な顔をする輝だが、直ぐに笑みを浮かべる。

「意外と冷静なわけだ。あんまり気にしない方がいいよ、きっと」
「余計に気になるわよ。それと、意外も余計」
「失敬。ま、仲良くしようぜ」

はぐらかされた気分だが、転校生と初日からギクシャクするつもりは無い。
仲良くする、と言うのも賛成だ。

「そうね。分からないことがあったら言って」
「サンキュー、是非とも頼らせていただきます」

輝のあか抜けた態度に、変に考え込んだ自分がバカらしく思えた美月だった。



午前中の授業が終わり、これから昼休み。


「う〜ん、終わったぁ。千代ぉ、ご飯行こう」
「ちょっと、待ってっ」

せっせと教科書類を片付ける千代を見守る美月。
と、トントン肩を叩かれる、相手は勿論のこと輝。

「何?」
「食堂行くんだろ?俺も一緒に行っていいか?」

まだこの学校の配置が分からない輝は同行を願い出る。
天然なのか、無垢な少年の様な瞳で訴えかけている。

『あたしって、この手の目に弱いのね』

千代と初めて会った時もそうだったな、と思い出す。

「良いわよ。千代もいい?」
「うん、一緒にいこ」
「助かったぜ、ありがと2人共!」

どこか大げさに喜ぶ輝。

3人で食堂に向うのだが、クラスの生徒の大概は、輝との相席昼食チャンスを取られた、と心の中で嘆いたそうな。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ