魔導新星リリカルなのはFutureS

□第1話「新星達」
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新暦、89年5月初頭。


爆音と共に逃げる4人の男達。

彼らを追うのは、


「無駄な抵抗はやめなさい!あなた達は逃げられないわ!」

遺失物管理部・機動八課、サモナー分隊隊長、

アルザスの飛竜“フリードリヒ”を駆る“キャロ=R=ハラオウン”二等空尉。


男達は質量兵器の密輸を行っていた違法集団で、同時にロストロギアの転売も行っていた。

「投降しなさい!そうすればっ」
「誰がするかよ!!」

男の一人が、質量兵器、実弾ライフルの銃口をキャロに向けた。

同時に、緑色の閃光がその男を飲み込んだ。


「やめとけ、やめとけ。そんな腕じゃ、俺の射撃には追い付けねぇよ」

キャロの傍を浮遊する男、茶髪に緑色の瞳、緑色のベストに赤いインナー、茶色のロングパンツのバリアジャケットを纏う彼、

サモナー分隊副隊長“ライアス=タフト”。
彼の手にする、先端に、頂点が開いた環形の左右に刃が備わった形状のものがある杖“エネフスティート”の魔力砲が、ライフルの発射よりも先に火を吹いた。

更に、男1人に飛来物が命中し、昏倒する。


「投降する気が無いなら、仕方ないですね」

こげ茶色の長い髪の先をリボンで結んだ、赤い裾の短い装束姿の少女“ミン=シェイメイ”の手に、大きな三方手裏剣“飛烏”が戻る。


そして、3人の間を青い影が駆け抜ける。

咄嗟に2人の男達がナイフを取り出すが、空かさず1人目にボディーブローを叩き込み、もう1人を強烈なハイキックを喰らわせた。

崩れ落ちる2人を、その“少女”が見下ろす。

彼女は、左右が首まで伸びた蒼い髪をしている。
また、両肩に出っ張った鋭角プレート、それが繋がった胸部装甲、両腕に手甲、両脚の具足、頭部のサークレット、そして、特徴的な金属のベルト、と言った青い鎧を纏っている。



「もう、悪い事するからよ」

彼女は両手を合わせて、地面に手をつけると、電気の様な光が走り、硬質の帯が何本も作り出され、犯罪者達を縛った。


「ふぅ・・・終わりましたね、隊長!」

飛んでいるキャロに手を振る。


「そうね・・・それじゃ、撤収!!」

地上に降りたキャロの合図で、今回の任務は終了。


仲間達と共に蒼い髪の少女は帰等する。


少女の名は、カシュリア=リコルヌ。


英雄として名高い、カノン=リコルヌの娘である。





魔導新星リリカルなのは
FutureS


始まります



OP:ミュステリオン
〔水樹奈々〕



新暦89年

神々と我々の世界との戦争、後に“解放戦争”と呼ばれる戦いから10年が経った。


神界が消滅し、この世界の構造が大きく変化した。

今まで様々な世界が次元の壁を隔てて区分けされていた。
その壁が、神界消滅と共に失われた。

その結果、全ての世界が1つの宇宙に存在するようになり、今までの世界が惑星単位で存在する様になった。


“統一世界”となった現在、時空管理局のあり方は少しも変わっていない。
変わった所と言えば、次元航行隊が“銀河航行隊”と名称を変えた事と、

本局が、惑星ミッドチルダの衛星軌道上に存在する様になった事だろう。



そして、ミッドチルダの地上に、去年運営が開始された新しい部隊が存在する。


遺失物管理部・機動八課

嘗て八神はやてが部隊長を務めた六課、
彼女の友人が部隊長だった七課、

過去の2つは試験的に運営され、またJS事件で多大な功績を残した為、永久欠番となった。

この八課は先の2つの流れを継ぐ部隊。
主な任務は、悪く言えば穴埋めである。
他の機動課が手が空かずに受け持てない事件を任されている。

作られたと言う事は、それだけロストロギアに関する事件が増えていると言う理由になる訳で、十二分に重要な部隊なのである。


そんな機動課の名に恥じないエリート部隊の隊舎では、先日の密輸集団の逮捕後の書類作業に追われていた。



隊舎オフィス


「・・・ああぁぁ!!面倒くさいぃぃ!!」

作業の手を止め、唸るカシュリア。
サモナー分隊のフォアードとして優秀な局員ではあるが、デスクワークが非常に苦手。

きゅ〜、とデスクに伏せる。


「もう、またなの、リア?」

隣のデスクで書類を黙々と進めるミン。
15歳の彼女は逆で、書類作業は得意。

因みに、カシュリアは『リア』の愛称で呼ばれている。

「だってぇ〜、チマチマした作業苦手なのぉ〜」

ミンに抱きついて涙目になってみるカシュリア。
最早、ミンからは溜息しか出ない。


「リアさん、休憩しますか?」

ミンの向かいの席、この部隊のもう1つの分隊“アサルト”のフォアードの1人“モニカ=ディグニティ”、11歳。
赤いポニーテールと同色の瞳が特徴的な少女は、名門ディグニティ家のご令嬢。
お嬢様であるが、非常に世話好き。尤も、去年は世間知らずが露呈して些細なアクシデントが絶えなかったが。


「わぁ〜流石、モニカは優しいっ」
「ダメよ、モニカ。この子はもう少し厳しくしないと」

モニカの隣で、ミン同様に書類作業に勤しんでいるのは、左目に補助機を付けている女性。

名は“ラグナ=グランセニック”、嘗て六課で活躍したヘリパイロット兼エーススナイパー“ヴァイス=グランセニック”の妹、24歳である。
一般的な入局が遅れてしまい、彼女達と同じフォアードだが、こういう時非常に頼れる年長者である。


「ぶ〜ぶ〜ラグナさんのケチ!」
「ケチで結構よ。それより、後ろ」

言われて後ろを振り返ったカシュリア。

「・・・あっ」

見てはいけない様な物を見た目をした。


「な・に・が、あっ、なの〜?」

笑顔で怒る、を見事に体現しているキャロ、24歳がいた。



第1話「新星達」
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