ヴァンガード短編

□白い1日
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〜白い1日〜



3月13日、時刻は23時55分。

先導家、


「ごめんね、ミサキ。無理言って」
「ううん、気にしないで」

深夜、しかも平日にもかかわらず、アイチの部屋にミサキがいた。
ベットに2人隣同士で座っている。

「どうしても、最初に渡したくて」

そう、後数分で時刻は0時になり日付が変わる。

3月14日、ホワイトデー。
バレンタインデーで女子からプレゼントを貰った男子が、女子にお返しをする日である。

特にアイチは、今となりにいる恋人のミサキから、甘く熱烈なバレンタインプレゼントを貰ったのだ。

その日、アイチは通算して何人もからプレゼントを貰ったのだが、ミサキが最後だった。
ならばと、お返しは誰よりも最初に渡したい、とお願いした。

ミサキは何の躊躇いもなくOKした。
実家の店は今日は定休日でアイチに会えないかも、と思っていた上、それがプレゼントのお返しなら断る理由はどこにも無い。
明日も平日で学校があるが、遅刻さえしなければ良いと考えている。


さて、カウントダウンに入る。

「「5、4、3、2、1・・・」」

時刻は0時になり、日付が14日になった。


「ミサキ!これ、ホワイトデーのプレゼント!」

ずっと側に置いていた可愛らしい袋に包まれたモノを渡すアイチ。

「ありがと、アイチ。開けていい?」
「うん」

袋を開けると、不恰好ながらラッピングされたクッキーが2枚と、
包装された細長い箱があった。

『クッキーは手作りね。シズカさんに教わったんだろうなぁ・・・これは?』

アイチが台所に立って奮闘する姿を想像するミサキだったが、やはり箱が気になる様子。
先にそれを取り出して、丁寧に包みを剥がす。
箱を開けると、

「これって・・・」

可愛らしい、白い花の飾りが付いたヘアピンが姿を現した。

「その、クッキーだけじゃバレンタインの時と吊り合わないかなって思って」
「そんな事思ってないのに・・・ありがとね」

アイチの頭を撫でるミサキ。

『ホント、優しい子なんだから』

女の子モノを探すなんて、きっと気恥ずかしかっただろうに、クッキーだって初めての挑戦だった筈。
健気で一生懸命な恋人を全力で抱き締めたい衝動が湧き出してくる。

箱に蓋をして、手作りクッキーを食べようとしたミサキだったが、

「あ、ダメだよ、ミサキ」

アイチはそれらを纏めて取り上げ、自分の机の上に置いた。

「アイチ?」
「ミサキ、何時も体形気にしてるでしょ?食べるのは明日、じゃないね今日の昼間でいいよ」

一瞬唖然となるミサキだったが、自分の日頃の習慣を気遣ってくれたアイチに胸がキュンとなった。
耐えられずに、アイチに抱きつこうとしたミサキだったが、

「あ、アイッ」

先に口を封じられてしまった、アイチの唇で。

「・・・あの時、ミサキからプレゼント貰ったから・・・今度は僕が」
「そう、だね・・・でも、明日学校だから。全体の2割頂戴、残りは今度のお休みで」
「うん」

見詰め合い、アイチから再びキスをする。
2人はお互いの手を握り合うと、ベットに倒れこむ。

アイチが上となって、合わさった唇を少し離し、舌を入れ込む。
楽々と開いたミサキの口、彼女と舌を絡めあう。

「うっ・・・んっ」
「・・・あっ・・・ちゅっ」

深く深くお互いの味を堪能しながら、アイチは手を解いてミサキの頭を撫で、片方の手を背中に回す。

『大好きだよ、ミサキ』
『私も・・・好きぃ』

ミサキも同じ様に手を回して、アイチの愛に応える。


初めてのホワイトデー、
バレンタインデーに負けず劣らず、甘い時間を過ごした2人だった。



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