ヴァンガード短編
□お帰りなさい
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店に戻った私達は、全国大会に向けてのデッキ調整を行った。
何をしてたか聞きに来た奴は、とりあえず睨んで、それでも来るなら蹴り飛ばす(被害者1名)。
途中、遅れてやってきた櫂が、珍しくカムイ君にデッキ調整のアドバイスをして、
これも珍しくカムイ君がそのアドバイスを受け入れた。
もしかしたら、あのファイトはアイチだけじゃなくて、櫂にも何か良い機会だったのかもしれない。
櫂とカムイ君がファイトを始めたのを見て、私もアイチを誘う。
「アイチ、私達もしようか」
「はい!」
久しぶりだなぁ、アイチとファイトなんて。
今日のショップ大会の結果、
ジュニアの部の優勝はエミちゃん、やっぱり才能あるのね、この子。
シニアの部は、森川だった、確かに私も負けたけど、なんか悔しい。
ま、無事に終わったから良かったんだけどね。
大勢の客が次々に帰っていくそのドサクサに私は、
「ねぇ、アイチ。今日、泊まってかない?」
「えっ、ええ!」
耳元で伝えると、アイチは顔を真っ赤にして慌てる。
ふふっ、この反応も久しぶり。
「良いでしょ。仮にも私に寂しい思いをさせたんだから、ツケは払ってもらわなきゃ・・・今日は、一緒にいて」
「・・・ずるいよ、僕が断れない事知ってっ」
うん、アイチの事なら何でも知ってる。
特に、こういう時の殺し文句は、ね。
アイチ、私のツケはそう簡単に払いきれないから、覚悟してね。
真夜中、私の部屋。
ちゃおは、シンさんが連れて行ってる。
何も気にする事は無い、気にする余裕なんて無い。
「あぁん・・・アイチィ!」
「はっ、ミ、サキ・・・」
ベッドの中で交わる吐息、
交わる唇、交わる舌、
交わる体、交わる体温、
どれも手放したくなくて、私はアイチにしがみ付く。
「もう・・・離れちゃ、いやぁ・・・」
「離れないよ、離さないよ、ミサキッ」
見詰められながら、体に伝わる衝撃が心地良い。
お互いに抱き締め合い、吹き出る汗すら愛おしい。
一緒に、私とアイチは溶け合い、頭の中が真っ白になった。
「ねぇ、何時から、ああなっちゃったの?」
私達は何も纏わずに布団に入ってる。
体は気だるいけど、頭はスッキリしている、きっと色々発散出来たからだ。
アイチの肩に頭を乗せて、まだまだ幼い胸板に手を添えて、ふと思い立った事を聞いてみた。
「カードの声の事は、何度か聞いたけどっ」
「分からないけど、1番は多分・・・あのデッキを手にしてから、かな」
あのデッキ、シャドウパラディンのデッキ。
アイチのロイヤルパラディンの対を成す存在。
「何時手に入れたの?」
「貰ったんだ・・・レンさんから」
レン、雀ヶ森レン、その名前を聞いて私は上半身を起こした。
アイツ、何時かはチームが勝てなかったのを、アイチの所為だって罵倒したくせに。
「アイツっ、じゃあ殆どアイツの所為でっ」
「お、落ち着いてよ!僕が、誘いに乗った僕が悪かったんだしっ」
「そんな事無い!・・・次に会ったら、蹴ってやる」
正直、本気でそう思ってる私。
と、突然腕を引かれてベットに戻されたと思ったら、
私はアイチの腕の中にいた。
「ダメだよ、ミサキ。怒ったら、ミサキの可愛い顔が台無しだよ」
あやす様に私の髪を撫でながら、そんな台詞を言うなんてっ。
「・・・アイチ、元に戻ったんじゃなくて、またちょっと変わった?」
「さあ?ただ、ミサキは笑ってる顔が一番って思ってるだけだよ」
あうっ、顔が熱い、絶対真っ赤だ、私。
何時もなら私がアイチを赤くするのに。
「ずるい」
「そんなことな、いっ?!」
癪だから、アイチの胸にあるのを甘噛みしてやった。
「ふん!1回で終わると思ったら、大間違えよ!」
形勢逆転、何時もの私のマウントポジションを取ってやった。
見詰め合うと、無性にまたあの言葉を言いたくなった。
「お帰り、アイチ」
「ただいま、ミサキ」
ああ、本当にここにいる、私のアイチ。
その嬉しさは、暫く治まりそうにないなぁ。
愛しいアイチの唇を奪って、私達は再び事を始める。
夜はまだまだこれから。
ただ、これだけはずっと頭の中にあった。
雀ヶ森レン、アンタは絶対に許さない。