ヴァンガード短編

□もう止まらない
3ページ/9ページ



夕食までの時間、2人はホテルの温水プールに向った。
元々、デートはプールにしたいと願っていたアイチにとって、本当に運が良かった。

更衣室から出たアイチ、合宿の時とは違い、トランクスタイプの水着姿。
上には1枚Tシャツを着ている。

「ここ、本当にホテルの施設?」

室内プールとは思えない充実っぷりに息を呑んだ。
今居る場所からでも、流水プールや複数のスライダープール、波のプールなどが見える。


「アイチ、お待たせ」

遅れてミサキがやって来た。
彼女の水着は、前回不採用となったアイチが選んだ白いワンピースタイプ。
花柄のパレオも腰に巻かれており、露出は前より抑えられている。

アイチは、ミサキを頭から足先まで眺める。

「えっと・・・変?」
「いえ・・・綺麗です、とっても」

見詰められて褒められると、照れて真っ赤になり、まともにアイチを見れないミサキ。

「そ、そう?も、もうちょっと露出があってもっ」
「ダメです!」

グッと近づいて訴える。
前回の黒ビキニもそうだが、どうやらミサキは腹や脚を出したがる傾向がある。
綺麗なのは問題ないのだが、アイチからしてみれば他の男に見られるのが嫌なのである。

「分かった分かった。さ、行くよ」

アイチの手を引っ張って、早速流水プールへ向った。


それから2人は、兎に角遊んだ。

合宿で2人きりに中々なれず、海でも周りの目があり控えめになっていた分があったので、その反動だろう。


流水プールで、交互に浮き輪に乗って流れて追い駆け合ってみたり。

スライダープールで、2人一緒に滑り密着しすぎて、アイチが色々危なかったり。

波のプールで、沖に行き過ぎてアイチの足が着かず、ミサキにしがみついたり。


特にミサキは、普段周りには見せない無邪気な笑顔をアイチに見せていた。

今は、休憩スペースのパラソルの下に寄り添って座っている。

「流石に疲れたね」
「そうですね。それにしても、ミサキさんのあんなにはしゃいでる姿見たの初めてです」
「わ、私だってはしゃいだりするさ。それとも変?」
「そんな事無いですよ。女の子らしくて、可愛いです」

笑顔で可愛いと、恋人から言われて喜ばない女はいない。
全力で抱きつきたい衝動を必死に抑えて、肩から抱き寄せるまでに抑えた。

「ありがと」

照れ隠しにそっぽを向くミサキ。
苦笑したアイチは、はい、と呟いて彼女に身を預けた。



部屋に戻った2人、流石に遊びつかれたのか、
夕食時間まで畳でゴロゴロしたり、お茶を飲みながらマッタリ時間を潰した。
その間も抱き合ったり、キスしあったりした。



夕食はビュッフェスタイルのディナーバイキングである。
朝食も同じ場所でのバイキング。

広い会場に、ホテルの浴衣姿でやって来たアイチとミサキ。

「バイキングって、ついつい多く取っちゃいますよね」
「そうだね。気を付けないと・・・」

日頃から体形維持に専念しているミサキにとって、ここは正念場だった。

各々好きな料理を皿に乗せて、指定されているテーブルに着く。

「なんだか不思議。アイチと2人きりで夕食なんて」
「そうですね。お互い家に泊まることはあっても、家族がいますから」

2人だけの夕食、どこか新鮮でくすぐったい気持ちになる。

「それじゃ、ジュースだけどね」
「そうですね」

互いにグラスを持って、

「「乾杯」」

今日と言う日を祝った。


普段より華やかな夕食を終えて部屋に戻った2人は風呂の用意。
備え付けの露天も悪くないが、ここはホテル自慢の浴場を体験するべきと判断した。

エレベーターで一階に下り、大浴場と書かれた案内にしたがって進む。


すると、

「ん?これって」

大浴場の手前で、ミサキが何かを発見した。

家族風呂とドアに書かれている。
他人に裸を見られたくないけど広い風呂に浸かりたい人、及び家族向けに備えられている様だ。

ドアに使用中の札を差し込む事で貸切に出来るらしい。

「・・・あ、アイチ、これって、男女一緒で、問題ないよね?」
「へ?!ま、まぁ家族風呂、ならそうですよね」

因みに今は偶然未使用。

「・・・一緒に、入らない?」
「えっ・・・あっ」

手を握ってきたミサキ、少し震えているのは彼女なりに勇気を出したから。

「・・・ミサキさんが、いいなら」

彼女の勇気に応える用に、握り返した。

「じゃあ・・・行こう」


自分達の背後を通過する人達の視線を気にすることなく、

2人で家族風呂のドアを開けた。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ