魔導新星リリカルなのはFutureS
□第3話「次元獣」
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だが、
「素晴らしい一手だ。常人、いやAランク魔導師ですら、一瞬にして死んでいるだろう」
ミョウが狙った心臓の前に出した左手で、受け止めていた。
マルキスは、空いた右手をかざし、紫色の魔力球を作り出した。
すぐさまミョウは両足の“ライトニングレギンス”から魔力を噴射、後退する。
その直後、マルキスが振り下ろすと、地面が爆発した。
『手の平サイズであの威力かよっ』
地面に出来たクレーターは、直径3mに達している。
また、ミョウだけが目撃できた事だが、先程トレーラーを破壊したのも、あの魔力球をボーリング球ぐらいのサイズにしたものを使用していた。
『ヨル、アレ“ただの”魔力球だと思うか?』
≪ボクの結論を言うなら・・・ありえない≫
魔力球はあくまでも魔力の塊である。
仮に殺傷設定にし物理干渉をONにしたとしても、結局は塊、鉄球等と同じでそのサイズを越えるくぼみは出来ない。
魔力同士ならば別だが、今のは対象は地面、反応が起こることも無い。
炸裂効果があったとしても、10cm程度の球体で、くぼみの概念を超えたクレーターを作る事など不可能。
「分析は終わりかな?では次はこちらの番だ」
マルキスが両腕を広げると、先程の紫色の魔力球が周囲に数十個出現する。
指を鳴らし、その全てがミョウに向かって襲い掛かる。
「ヨル!」
≪ラジャー!≫
両腕の手甲“ナックルマンバ”、その手首に内蔵された鎖“スパイラルボア”を射出、手に取り、双頭の蛇の如く振り回し、迎撃を試みる。
しかし、1発目を破壊した途端、他の魔力球が誘爆。
数十発分の衝撃が、鎖をミョウの背後まで吹き飛ばし、その影響で両腕が引っ張られた。
その爆煙の中からマルクスが出てきて、右手を突き出してきた。
『掴みか?!』
掴み技を仕掛けると判断したミョウは、安定しない体勢のまま低空跳躍し、跳び回し蹴りを決めにかかる。
だが、攻撃は体に触れる直前に、マルキスを覆う光に阻まれた。
先程ミョウの貫手を防げたのも、この光の膜のせいだ。
「その腕、厄介なようだ」
マルキスはその隙にミョウの右腕を掴むと、
即座に爆破した。
地面に転がるミョウだが、直に立ち上がった。
煙が上がっている右半身は、爆発した箇所がナックルマンバだった事が幸いし、軽い火傷程度で済んでいる。
尤も、
『ふざけんなよっ、俺が戦闘機人じゃなかったら、右半身の骨が砕けてたぞ!!』
内側に伝わる衝撃は計り知れず、骨格が強化金属で、長年鍛えていなければ被害はもっと深刻だっただろう。
「ほう、頑丈だな。この時代のデバイスは進んでいる」
何より問題なのが、マルキスの手はあの爆発のダメージを負っていない。
それどころか、あのようなタイムラグがゼロの爆破魔法など、ミョウは見たことが無い。
『強いてあげれば、アルマのランブルデトネイターだな』
嘗てチンクと呼ばれていたナンバーズの一人だったアルマ、彼女の神気“ランブルデトネイター”は物体に爆破能力を付与、または爆破エネルギーを打ち出すと言う物だ。
だが、こちらは発動するための媒介が必要である。
対するマルキスは、何も使っていない。
「色々疑問はあるだろう。そうだな、なら爆発の種明かしでもしよう」
なんと、マルキスが自分の能力の秘密を教えると言い出した。
「私は子供の頃から花火が好きでね。特に爆竹の類は好きだった。あの破裂した時の音と熱が何とも言えない」
「な、何を言ってっ」
「それが、動物を花火で殺す事にそう時間は掛からず、十代後半からは、爆弾でモノを、人を壊す事に快感を覚え始めたっ」
「だからなんだ!!!」
何かと思えば、聞きたくも無い爆弾魔の悪趣味な話に、苛立ちを露にしたミョウ。
だが、同時に、マルキスの能力に気付いてしまった。
「・・・ま、まさかっ」
「この能力を身につけたのはね、自分で爆弾を作るのが面倒になったからだよ」
つまり、
「私の能力“ブラスティングレイザー”は、私の魔力そのものが“爆薬化”するものだ」
マルキスの魔力による攻撃全てが爆弾、しかも非常に強力な高性能爆弾という事だ。
「種明かしはここまでだ。では、死んでもらえるかな?」
再び両腕を広げ、今度は先程の倍の大きさの魔力球“スフィアボム”を10個作り出す。
「ゴー」
その一言で飛び出した飛翔する爆弾は、ミョウをしとめようと襲い掛かる。
ミョウは、一発一発を避けながら反撃の機会を伺っている。
能力が分かった所で、ミョウの不利である事に変わりは無い。
爆弾であるから、払い落とす事も出来ず、仮にバリアで防いだとしても立て続けに爆発されれば、衝撃に耐え切れず、大きな隙を作ってしまう。
また、相手の防御能力が分からないので、有効打も見つけられない。
その時、マルキスが指を鳴らし、スフィアボムを全て同時爆破した。
しかも、その1つはミョウの前にあり、
「がはっ!!」
吹き飛ばされたミョウは、腹を押えて片膝を付け、痛みに耐えている。
顔を上げた時、マルキスが手の平をこちらに向けているのが見え、光が放たれた。
『砲撃っ・・・いや、違う!』
その光は、まるで鞭の様にミョウの右上腕に巻きついた。
『線・・・まさかっ』
ミョウが、その光の線を切ろうとした瞬間、
「“ライナーマイン”」
線が、一種の爆導索の様に一斉に爆発した。
爆発元であるマルキスは、やはり無傷。
対するミョウは、
「くっ・・・はぁ・・・」
右上腕部の上皮が完全に吹き飛んでおり、内部の人工筋肉とその隙間から金属骨格が見え隠れしていた。
「なに?君は人間ではないのか?」
「戦闘機人を知らないのか?・・・そう言えばっ、この時代とかなんとか言ってっ」
「筆頭!!」
非難作業を終えたヴィクトル達が戻ってきた。
それに気付いたミョウは、
「・・・神気、発動・・・」
瞳の色が金色に変わる“機人モード”になり、神気“アトミックサンダーボルト”を発動させた。
動かせる左腕を掲げて、紅い電気の放電現象を広範囲に発生させた。