魔導新星リリカルなのはFutureS

□第3話「次元獣」
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3日前の事、ミョウは任務で質量兵器の密輸組織の逮捕に乗り出していた。



「筆頭、全員逮捕完了しました!」

ミョウ率いる捜査チーム“ハン”の部下の1人の男性“ヴィクトル”が報告に来た。

「予想より早かったな」
「ええ。まあ、トレーラー一台分ですからね」

2人は、バインドを施された犯人6名が、部下達によって現地の局員に引き渡されている様を見詰めている。


「・・・なあ、積荷は全部チェックしたか?」
「今作業中です」
「ちょっと見に行く」

そう言って、ミョウはトレーラーに向かって歩き出した。

この時、何か胸騒ぎの様なものを感じたのかもしれない。



トレーラーのコンテナ部分に入ると、2人の男女が積荷のチェックをしていた。

「中はどうだ?」
「筆頭!今リストを作ってます」

ミョウに気付いた女性の部下“ネフェル”が、製作途中の積荷リストを見せる。

「携帯式の質量兵器の弾薬に爆薬、麻薬の類もか」
「ホント、ろくでも無い連中ですよねぇ」
「まったく・・・残りは?」
「後はライアンの方が」

ネフェルが指さす、コンテナの運転席側では、ハンの一員の男性“ライアン”が箱の中身を確認している。



「お〜い、ライアン?」
「あ、筆頭!後少しでっ」

ライアンが振り返った瞬間、一番奥の小さなケースが異様な光を放ち始める。


「なっ、えっ?!!」
「なになになに?!!」
「ライアン!ネフェルを連れて逃げろ!!」


テンパる部下達を外へ逃がし、ミョウは構えた。




慌ててトレーラーから逃げてきた2人を見て、何事かと戸惑うヴィクトル。

「おい、どうした?!」
「どうもこうも、ライアンが!」
「俺は何もしてねぇ!!それより、筆頭が残ってっ」

ミョウの身を案じた瞬間、

背後で強烈な爆音が響き渡り、熱を帯びた爆風が吹き荒れた。


「「「筆頭!!!」」」

3人が同時に叫んだ。


すると、燃え盛るトレーラーの炎から1つ影が飛び出した。


それは、管理局の制服から、赤い裾の長いジャケットと黒のインナー、青のパンツの防護服を纏った、

ミョウだった。


「筆頭!良かった無事でっ」
「でも、アレって」
「ああ、ヨルムンガルドをセットアップしてる」

安堵したライアンだが、ネフェルとヴィクトルはある点を気にかけた。


両腕と両足に装備された、ガントレットと膝までの金属ブーツ、

複合武装型インテリジェントデバイス“ヨルムンガルド”

コレを装備する時、それは強敵と出会った場合のみ。



ミョウの、完全に戦闘モードに入った強い視線は、未だ絶えず燃えているトレーラーに向けられている。


揺らめく炎の中から、

人が、チェックの段階でハンのメンバー以外誰も居なかった筈のその場所から、平然と歩いて出てきた。

靡く黒く長い髪と、同色の胸元を明けたスーツには一切燃えた跡が無い。


「・・・なるほど、時空管理局か?」
「誰だ、お前。何であの“ロストロギアの中から”出てきた?」

出てきた者、声からして男であるが、ミョウはこの男がロストロギアから出てきたと言った。

あの発光したケースの中にロストロギアが入っていたのだろうが、そこから出てきたというのは。


「何でもないさ。ただ単に、コレに封印されていたのだからな」

男が手にしているそれは、宝石型のロストロギア。
力を失ったのか、輝きは無い。


「何十年振りだろうか。外の空気はっ」

男は、解放された喜びからか、体を震わせ、抜け殻同然となったロストロギアを握りつぶし、


「ははっはははっ・・・あああぁぁぁはははははははっ!!!」


狂気を帯びた高笑いをし、全身から莫大な量の魔力を解放する。

それに伴った強力な風圧が、ヴィクトル達の足をすくい、

地に足着いて立つミョウですら、大気から伝わる力を肌で感じていた。



「・・・失礼、見苦しいところを見せてしまった」

男は平静を取り戻し、紳士的に振舞う。

しかし、

「更に、失礼な事を承知で言わせて貰う・・・・・・私に殺されてもらえないだろうか?」

その言葉は、紳士を通り越した、明らかな殺人者のものだった。


「・・・因みに拒否権は?」
「無い。勿論、後ろの君の部下でも構わないが?」

殺人の矛先を、ミョウの部下に、と言い出した男。


「てめぇ・・・後悔すんなよ・・・」

男は、ミョウ=イサキの、


「そっちが死んでも、文句無しだぜ」


“紅蛇王”の逆鱗に触れてしまった。



「自己紹介が遅れてしまったな。私の名は“マルキス”」
「ミョウ=イサキだ」

互いの名を名乗ると、ミョウは両腕を上下に広げる構えを取る。
その際、手は拳ではなく開かれている。

対するマルキスは、スーツのズボンのポケットに両手を入れたままだ。



ミョウは、睨んだままゆっくり前進する。

『分かる。奴を野放しにすれば、どれだけの犠牲者が出るかっ』

先程の狂気、感じる内に秘める魔力、どれもがミョウの脳に危険信号を発生させるものだ。


現在、捉えた罪人共々現地の局員達を非難させるよう部下達に念話を伝えてある。


自分がすべき事、それは部下達の時間を出来るだけ稼ぎ、


『躊躇いはない。奴の命・・・奪い取るっ』


マルキスを殺してでも、倒すこと。


駆け出す際の脚部の動きに連動させ、魔力の流れを作る。

それによって生み出される加速は、従来の加速魔法を遥かに超えた速度を与える。

一切の無駄を省いたその体運びによって、マルキスとの間合いは一瞬で詰められ、

同様の技術で打ち出される貫手は、鋼鉄の槍に等しき貫通力を持つ。


雷光の如き一閃を繰り出す格闘法、それが“LAI(ライトニングアーツ・イサキ式)”である。
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