魔導新星リリカルなのはFutureS

□第8話「英雄が残すもの」
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ガーネが、アルファード家の因縁に立ち向かった


レッドエリクシル教団の行動が次第に活発化していく


そして、あの英雄がミッドチルダに近づいていた




魔導新星リリカルなのは
FutureS


始まります



OP:ミュステリオン
〔水樹奈々〕




数隻の宇宙巡行艦が防衛戦を張っていた。


相手は、

「ガアアァァァァ!!!」

体長50mを超える大型ビーストタイプの次元獣、

肥大した腕、禍々しい翼、裂けた口と備わる牙、

どれもがこの次元獣の凶暴さを物語っている。


何よりも、その巨大な口から発せられるエネルギー波が、取り囲むGIAを次々と大破させてゆく。



旗艦であるM型巡航艦“ラーディウス”のブリッジに、戦況が慌しく報告される。

「艦長!我が隊の戦力、30%低下!!」
「増援が来るまで持ちこたえさせろ!!GIAパイロットの回収を急げ!!」


艦長“グリフィス=ロウラン”はこちらの劣勢に下唇をかむ。

何とか打破しようと、手元のコンソールを操作して通信を繋ぐ。


「テン三尉、何とか時間を稼いでくれ!」



専用のオレンジ色のエクストラ・グランビアに乗って戦っている“テン=リコルヌ”。


「何とかします!!」

声を張って返答するのは、今でも何とかしようとしているのに言われてムカッとしたからだ。

直接の上司ではない、テンはエースパイロットとして派遣されているだけなのだ。


『こうなったら、フルパワーを連続照射してっ』

テンのGIA“イーグルアイ”は、長距離の砲撃戦に特化した機体調整がされている。

それとテンのIS“ヘヴィバレル”が合わさる事で、絶大な威力になる。

問題なのは、チャージタイムにある。



テンは、グランビアの右脇に抱える“Dスナイパーキャノン”の照準を次元獣に合わせ、一発目を放つ。

右肩に命中し、次元獣の注意が、彼方にいるテンに向けられた。


ここまではいい、仲間の被害がこれで無くなる。

問題なのは、今から再チャージをしなければならない事。


最大出力を数秒間照射し続ける為には、最大10秒かかる。

『長いっ!!』


迫ってくる次元獣と、チャージタイム、1秒が凄まじく長く感じる。



そんな時、イーグルアイにメッセージが転送、モニターに表示された。



―その場から離れろよ、親愛なる俺の妹よ♪―



「これって!」

文脈を理解する前に体が反応、操縦桿を動かし、その場から離脱した。


その直後、純白の閃光が走りぬけ次元獣に命中した。



そして、


黄金に輝く、その身に白銀の鎧を纏うドラゴンが飛来してきた。


ドラゴンと次元獣が対峙する。


≪何だ、チビ!どけ!!≫

ドラゴンの大きさは10mに満たない、差は歴然、チビと言われても仕方が無い。


次元獣は何機ものGIAを屠ったエネルギー波を放つ。


直撃を受けたドラゴン、噴煙が立ち込める。



だが、


≪ワリィ、チビは言われ慣れてる≫

煙が晴れると、ドラゴンの右腕に、次元獣のエネルギーが受け止められ、球体状になっていた。


≪が、好きじゃない!≫

ドラゴンは、そのエネルギー球に自分の力を加えて巨大化させて放つ。


撃ち返され、対処できずに直撃した次元獣、更に、


≪んじゃぁ・・・な!!≫

ドラゴンの口から放たれた、超極大のエネルギー波が、


≪う、うわああぁぁぁぁぁ!!!≫


次元獣を跡形も無く消し去った。



艦長席でグリフィスが唖然となっている。

すると、

「か、艦長!ドラゴンからメッセージが届いてます!」

恐らくですが、と付け加え女性オペレーターが内容を表示した。

と同時に、ドラゴンはその場から飛び立っていく。


メッセージの内容はこうだ。



―グリフィスも立派になったもんだ。嬉しいぜ。

とりあえず帰るから、クロノのバカにでも伝えててくれ。

んじゃ♪―



あまりにもフランクな、その上グリフィスを呼び捨てにし、挙句の果ては提督として名高いクロノをバカ呼ばわりする始末。

ブリッジクルーが愕然となっていると、


「はっ・・・ハハハハッ!!」

グリフィスは腹を抱えて笑い始めた。


「ハハハッ・・・帰ってきたんだ・・・帰ってきたんだ、あの人が!!」

その表情は、歓喜に溢れていた。


もう1人、喜びに胸を躍らせる者がいた。


飛び去るドラゴンを見詰めるテンは、


「・・・お帰り・・・“お兄ちゃん”」


涙を流す程喜び、直に本局への帰還許可を申請するのだった。





ドラゴンの向かう先は、


≪急がないと、な≫


ミッドチルダ。




第8話「英雄が残すもの」



新暦89年7月14日


ミッドチルダの首都クラナガンが悲鳴に包まれる。


「グワァアァァァァ!!!」

巨大な20mを超える次元獣が通りを闊歩しているのだ。

図太い2本足が踏み締める度に、地響きが鳴る。


その場に駆け付けたのは、セブンサードの1人“カール”。


「どっから着やがったんだよ、このデカ物!!」

来たのは良いが、カールには1つ問題があった。

デバイスを持たず、対人戦特化の為、このタイプの大型生物戦は極端に苦手としていた。



次元獣のパンチをかわすカール、
今し方居た場所は、自分が優に2人は入れる程のクレーターが出来ていた。


「チッ!こうなりゃっ」

ダメ元で神気“クラフティアイ”を使おうとした時、


「退きなさい、駄猫!!」

背後から聞こえる、一番嫌な愛称で呼ぶ少女の声。

反射的退いた瞬間、銀の影が駆け抜け、

次元獣の腹に一閃を与え、後退させた。



「駄猫、言うなっつってんだろ、このイタチ女!!」

カールの目の前で着地した和服美少女“レイ”、

「誰がイタチよ!!」

仕込み傘の“明鏡”の刀を向けて怒る。

が、直に次元獣に向きなおす。


「コイツ、全然効いてないわ。どれだけ頑丈なのかしら」

相手の皮膚の分厚さに舌を巻くレイ。


その間、次元獣が待ってくれるわけも無く、大きく裂けた口からエネルギー波が自分達に向って放たれる。

避けたものの、地面を一直線に抉り取る、これがビルに向けられたら人的被害は甚大である。


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