dream

□駿河幸輝
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日だまりの、資料室で



「えっと…次は」
私と幸輝先輩は神代先輩に命令され…もとい頼まれた資料整理をしていた。
「それにしてもすごい量だな…」
幸輝先輩は苦笑まじりに、分厚い紙の束をまとめあげる。
「すみません…手伝ってもらって…」
「いいって、これぐらい」
幸輝先輩は手をひらひらさせながらそう答え、まとめた資料をバサッと段ボールに放り込む。
「…それにあかねと二人きりだし…」
「え?」
「い、いや何でもない!!…こ、ここ少し暑いな!?」
「そうですね…でも」
閉まったままの窓をちらりと見る。
「開けるわけには…」
「だよな」
風が吹いたら大惨事だ、と先輩は笑う。
普段はあまり使われない資料室は少し空気が籠っていて、古い紙の独特の匂いがする。やわらかな日の光できらきらと塵が舞っていた。そんな中私達は黙々と作業を続けていた。

「あかねってさぁ…」
「はい?」
埃にまみれたファイルをぱらぱらと開きながら唐突に幸輝先輩が口を開く。
「映画とか好き?」
「は、はい?」
「いや、今度さ…って何してんの?」
埃を払う手を止め、少し驚いた声をだす。
「いや、棚の上の段ボールを…」
そう言いながら、私は背伸びをし精一杯手を伸す。
「ちょっ、無理だって、俺がやるから…」
「きゃあ」
資料が雪崩れのように落ちてくる。なすすべもなく私は硬く身を縮こめた。しかし何の衝撃もなく、おそるおそる目を開けた。
「っ…セーフ」
私の目の前に幸輝先輩の顔があった。私を庇うかのように身体に覆いかぶさっていた。
「…!!」
瞬間、目と目があう。互いの吐息が聞こえるくらいの距離。顔を赤らめ、慌てたように幸輝先輩は身体を離した。
「わ、悪い!!…あ、怪我ないか?大丈夫?」
「いえ…私は…幸輝先輩こそ……」
鼓動の音が聞こえそうなぐらい高鳴る胸を押さえながら幸輝先輩を窺う。
「いや、俺は平気…でも」
とちらりと視線を移す。つられて私もその視線の先を見た。
「あ…」
「これは見つかったら会長怒るかな」
「ど、どうしましょう…いやでも私のせいだし、私一人で片付けますし、だから先輩は大丈夫ですし」
慌ててバサバサと散らばった資料を集めながら、自分でもよく分からない調子でまくしたてる。
すると幸輝先輩は、くすくすと笑いながら、一緒に手元の資料を片付け始めた。
「だだだ大丈夫ですよ!私一人で」
「いいって」
と言葉を遮り、悪戯っぽく目をすがめる。
「でも…」
「そのかわり週末は俺と…」
「貴様ら何をしている!!」
「か、神代先輩…」
「あちゃー」


そして片付けを終えた後、私と幸輝先輩、何故か剣先輩も一緒に、こっぴどく神代先輩に叱られた。





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