dream
□神代朔耶
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逢ふ瀬夢
ひたひたと私は長い廊下を歩く。
ただひたすら。後ろは振り返らない。振り返ってはいけない、そんな気がするから。
唐突にドアが目の前に現われる。
少しのためらいのち私はそれに手を伸ばす───
目が覚めたら朝だった。
「やな夢……」
じっとりと汗がにじむ。
起きるとその夢は霧がかかったように曖昧になりどんなものか思い出せなくなる。
気怠さだけが残る。頭が少し痛い。
「おい」
顔を上げると朔耶先輩がこちらを見ていた。
「…あ、私ですか?すみません」
全くだ、といわんばかりに鼻を鳴らす。
「頼みがある。資料室へ行ってこのファイルを取って来い。赤いやつだ」
そういつもの口調で私にメモを渡した。
ひたひたと私は長い廊下を歩く。
私はひたすら足元を見ながら歩く。
「っと」
唐突にドアが目の前に現れた。
あやうく通り過ぎるところだった。
ふぅと息をはいてドアに手を伸ばした。
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