dream

□鬼窪剣
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Melt Down


放課後の校庭をじっと見下ろしていたあかねは教室のドアがガラッと開く音に顔を上げた。
「あ…」
予想だにしなかった人物に驚いた声を出す。
その人物――鬼窪剣はちらりとあかねを見る。あかねは何となく気まずい気持ちで、秘密にしてた隠し事がばれた子供のように顔を背けた。
「何してんの?」
いつものような明るい口調でない、低く苛立ちを含んだ声。
「えっと…」
戸惑い気味にあかねは口ごもる。
「何?俺に言えないこと?」
つかつかとあかねに近付きながらどこか楽しげに尋ねる。
それはまるで狩りを楽しむようにゆっくりと獲物を追い詰める獣のようであった。
「いえ、そんなんじゃ…」
何と説明すればよいか分からずそのまま怯えたようにうつむく。
しばらく無表情にあかねを見つめていた剣はふっと笑って
「あいつなら来ないよ」
とそう言った。
「え?」
思わず顔をあげ剣の顔を見る。剣はぞくりとするような冷たい笑みを浮かべていた。
「なんだ…やっぱ待ってたんだ」
「…そ…そんなん…じゃなくて…私は…きちんと返事をしようと…」
だんだんと小声になるあかねに、ふうん、と口角をあげながら剣はせまる。
「放課後に、空き教室で、告白の返事ね」
一つ一つ区切るようにそう言いながら、じわじわとあかねを壁際に追い詰める。
「剣先輩?」
普段とは全く違う様子の剣を不安げに見上げる。
「それだけで済むと思った?」
「…え?」
「教えてあげる」

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