dream

□藤原雅
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特等席


日だまりの中でまどろんでいた私は
カタンという音に、ふと目を覚ました。
隣に雅先輩が座って本を読んでいた。
ぱら、とページをめくる先輩の横顔は
やっぱり綺麗な顔だよなぁ、と
夢心地でぼうっと見とれてしま……って

「………!!??」
「おや、起こしてしまいましたか」
「え、いや…」
「ふふ、愛らしい寝顔でしたよ」
「へ!?」と素っ頓狂な声をあげた私に
 先輩はくすくすと笑う。
「とても気持ち良さそうでしたのに…」
 起こしてすみません、と謝る先輩。
「勉強してたんですか?」
「え…あ、はい。…うとうとしながら…」
「日なたは気持ち良いですから」
 眠くなりますよね、と微笑む。
「えっと雅先輩は?」
「私は…」雅先輩は本を軽く持ち上げ
ただの読書ですよ、と静かに答える。
そのまま二人して自分の作業に戻る。
ペンとページをめくる音だけがする。
とは言っても私は変に緊張しっぱなしで
問題にあまり集中出来ないでいた。

やっぱり、と不意に先輩が口を開く。
となりを見た私に先輩はふわりと笑い
「"ここ"は良いですね」と言った。
私は目をしばたきその意味を考える。
「居心地が、ってことがですか?」
「まぁそんなところですよ」
「私も好きですよ。ぽかぽかしていて」
そうですね、でも私は…と少し間の後

「きっと姫野さんが隣だからでしょう」

そう言って先輩はにこりと静かに笑い
また読書に戻っていった。


「おや、先ほどから手が止まってますね」
「え!?あ、いやその…」
「私でよければ教えて差し上げますよ?…色々とね…」






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