dream

□ヴァン
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破戒


ある意味"麻薬"みたいなものだと思う。
自分でも分からないほどに
その血を口にした時から
俺は、俺の本能が、お前を求める。
視覚を、触覚を、嗅覚を、聴覚を、味覚を
五感の全てが刺激される。
お前から目が離せなくて、触れたくて、
僅かな匂いや微かな吐息の音さえにも
理性が崩れ落ちそうになる。
何よりもう一度その血を味わいたくて
温かくて塩気のあるバターのように
とろりとした甘くて苦いその血を。


俺の中の何者かが囁く。
その言葉はあまりにも残酷で身勝手で
ゾクゾクするぐらい魅力的で
俺は必死でそいつを押え込む。
奴とお前を守ると約束したのだ。
だから、それでも、それなのに…
何故こんなにも執着するのか
自分自身が恐ろしくなってくる。
また別の何者かが囁く。
そうだ、もう一度、もう一度だけ。
お前が、お前の全てが欲しいのだ。


もしもその最後の一滴まで口にした時
俺の中のからっぽの渇いた部分は
満たされるのだろうか。
「ヴァン先生!」と夜の屋上に
現れたお前を見てふとそう思った。
皮膚の下でぞわりとそいつが動く。
もうすぐ月が満ちる。
悪いな、もう限界かもしれない。
そっと手を伸して触れた彼女の肌は
柔らかくて、温かかった。




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