dream

□ヴァン
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Journey


普段は静かな街だが
今日は何か催し物があるらしい。
街の広場への道を赤毛と金髪の子供が
駆けて行くのが見えた。

部屋はがらんとしていた。
あかねは夕日がさす窓際で
頬杖をついて外を眺めていた。
赤く染まったその光景はとても幻想的で
まるで時間が止まっているようであった。
「おかえりなさい」
と出迎える彼女を何故だか俺は
まっすぐ見ることが出来ずにうつむき
「今夜出発だ」と低く言った。
そうですか、と彼女はもう一度外を眺め
「ここも長かったですからね…」
どこか寂しげに微笑むその様子に
今度こそ耐え切れなくなり俺は黙り込む。
遠くで陽気な音楽が流れている。

「お茶いれてきますね」と
彼女は立ち上がりキッチンへ向う。
すまない、と思わず口をついた言葉は
何に対してのものだったのだろうか。
ぱた、と立ち止まった彼女は、
ヴァン先生…と一呼吸置き
「私は一緒にお茶が飲めて幸せです」
と穏やかな口調で言って部屋を出た。

切なく温かい思いが胸に溢れる。
"愛しい"その言葉の意味を
あかね、お前は俺に教えてくれた。
遠くで子供の歓声が聞こえる。
俺は深く息を吸って部屋を出た。





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