ノベル
□正月
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『も〜い〜くつね〜る〜と〜!お〜しょ〜う〜が〜つ〜〜〜!!』
「あといくつ?!」
「あといくつ?!」
「あといくつ寝るとお正月?!」
「・・・今日」
「OH!」
『今日だったぁぁぁ〜〜〜!!』
大はしゃぎの3バカを相手にしながら、ビュティは虚空を見つめていた。
年を越したばかりだっていうのに、この疲労感はなんだろう。
アフロとトゲとところてんのトリオは、毎年新年を迎える度に、テンションゲージも勝手に新品交換されてしまうに違いない。
とにかくもう、うるさいとかのレベルじゃないのだ。
「今年は世界がどうなるか分からないから、温泉旅館でしっぽりと年を越そうぜ」
と言ったのは、一行の一応リーダー、ボーボボだった。
首領パッチや天の助も珍しくこっくりと無い首で頷き、彼の意見に賛成した。
呟かれた『最後の晩餐だもんな・・・』という言葉が気になったが、とりあえず聞き流すことにした。なにせ温泉旅館でしっぽりの魅力に一番心奪われていたのはビュティだったからだ。
お正月くらい心休まるひと時がほしい。温泉にのんびり浸かるなんて、考えるだけで夢のようだ。
いそいそと自ら旅館の手配をとり、宿泊の準備はなんの滞りもなく進められた。
しかし・・・幸せは、長くは続かないものだ。
彼らが大人しかったのは、23時59分までの事だった。
「もう今年も終わりか・・・おっ。あと10秒で来年だな。用意はいいか?」
「ああ、いいぜ。・・・5、4、3、2、1・・・ゼロ」
ここで、ビュティの静かな一時は終わりを告げた。
『ハッピーニュウ・・・・イヤッハァァー!!』
言葉を合図に、3人は突如狂ったように騒ぎだした。尋常じゃない。ため込んでいたパワーを一気に放出したという感じだった。
どうしてこんなことに。いっそ夢であれとビュティは思った。
しかし誰にも止められない。
初詣に行こう!と言い出すまで、彼らは妖怪のように騒ぎ散らした。