ペルソナAs

□面倒臭がり屋の方程式
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 ――それから幾分か時が経ち、三階の二年四組教室。

 全学年六クラスからなる高等部であるのに、この組に居る人物たちは『そう』決められたかのように揃っていた。

 言うまでもなく、誠、猛、悠浬の三人である。

 縦横五列ずつからなる席において、誠の席は前より二列目、左側の窓より二列目の席である。そこから左斜めに猛の席があり、誠の右隣には悠浬の席がある。

 これもまさに、三人が集まるよう決められているようであった。

 しかし、そんな中でも三人の表情は曇っていた。誠に関しては、単にボーッとしているだけなのかも知れないが、驚くことに三人のみならずクラス全員の顔が曇っていたのだ。

 その一番の原因は教壇に立つ女教師、ハタケンこと畑山先生の授業だからではなく、日中の暑さたるものが教室全体に立ち込んでいるからであろう。

 暑さに騒めく教室の中で、畑山先生は気怠な声を上げていた。


「おーい、お前ら。クーラーが壊れたからって、これくらいの暑さでへこたれるとか情けないぞー」


 畑山先生の特徴であるやる気のない声は、別段教室が暑いからではない。普段からこうなのである。

 その証拠に、長いボサボサの黒髪にスーツの畑山先生の額には、一滴も汗が滲んではいなかった。


「やっぱ、コイツも誠と同じタイプかよ……」


 そう呟く猛の虚ろな瞳には、三十度という文字が朧気に映し出されていた。
 故障したクーラーの液晶画面に大層疎ましい視線を向けながら、時折畑山先生を一瞥する猛。

 しかし、そのような動作をただ繰り返すのは、猛だけではなかったのだった。


「うーん、みんなイマイチ集中してないなー。あー、こんな状態で授業しても面倒臭いだけだから、楽しい数学のクイズでもするか」


 クラスの雰囲気を見計らってか、頭を掻いた後に黄色いチョークを手にして、黒板に三つの数字を書く畑山先生。


 @10372
 A42123
 B35534


 各五桁の数字をゆっくりと書き終えた畑山先生は、手を二度三度と叩く。


「はい、注目。この中で3で割り切れるものはどれでしょうか。すぐ答えろよー。んじゃ、バンダナ」


 その瞬間、両肩をビクッとさせた猛に、畑山先生の口元が僅かに歪んだと認識するのは難しくないだろう。
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