◎高校生な静雄 太陽も傾き始めた放課後。お目当ての後ろ姿を見つけて駆け寄ると、それに気付いた彼はビシリと腕を前に突き出す。 咄嗟のことに反応できなかった私はそのままがっしり頭を掴まれた。 『喧嘩おつかれさま』 「おう」 『で、この手は何ですかね』 「何って……離したら抱き付いてくるだろ」 『いいじゃん』 「お前の服まで汚れる」 そう言いながら徐々に視線を逸らす彼。 いっつも自分のことより私のことを第一に考えてくれる。ほんと自慢の彼氏。 『でも私の服が汚れるより私が静雄不足で死ぬ方が深刻だよ!』 「俺不足って何だよ。つかお前の頭の方が深刻だ」 『わぁ酷い』 うん、ちょっとさっきの訂正するね。静雄は優しいけど、たまに意地悪だ。 「服着替えたらいくらでもくっついてやる」 『……よくもそんな恥ずかしいセリフを』 「う、うるせぇ!ほっとけっつーの!」 自分で言っておいて耳まで真っ赤にしながら怒鳴る。思わず吹き出したら強烈なデコピンを食らった。 毎回思うけど、言ってるとき恥ずかしいとか思わないのかな。手繋ぐのも恥ずかしがってるくらいなのに。 『ってか痛い!超痛い!』 「あ?」 『おでこだよ!これ絶対たんこぶ出来るんだけど。むしろ砕けてるかも』 「たかがデコピンだろ」 『静雄のデコピン通常モードで喰らったら普通に気絶もんだからね!?』 「あーもう分かったよ」 『何が!』 ちゅ、とリップ音が聞こえて離れてゆく静雄。もう目の前に映るのはところどころ切れ目の入ったワイシャツだけ。 「これで満足かよ」 『い、いま、ちゅって…!』 「わざわざ言うなバカ」 『……満足、っていうか…過剰摂取で……死にそ、う』 「ふん。忙しいやつ」 夕焼けに合わせるように私たちの頬も赤く染まった。 夕焼け子焼けで キスしましょ? (今日おでこ洗えない!) (いや、洗えよ) 高校生の静雄は不器用だけど彼女には優しくて男前だと良い。きっと家で二人きりのときは全力でデレるに違いない!(……という妄想)。 |