完結済

□シズシズにしてやんよ!
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小学生なしずおくん





今日一日うちで預かることになった、と言って親から半ば強制的に押しつけられたのは、まだいくらか小さな少年。

お母さんの弟の子供。つまり、従兄弟らしい。

名前を聞いてみると「へいわじましずお」と少々ぶっきらぼうだったが、答えてくれた。

でも最近は小さい子と触れ合う機会なんてなかった私は、どうしていいものかと思惑中である。


『あ、そうだ。しずおくんプリン食べる?』

「食べる!」


さっきまでぶすっとしていた顔をこちらに向け、笑顔を見せてくれたしずおくん。初めて目線の合った双眸はきらきらと輝いて見える。

ああもう何これ。どうしよう超かわいい。しずおくんマジ天使なんだけど。


『コンビニのだけど、大丈夫?』

「へーき」


じゃあそこのイスに座って待っててね、と声を掛ければすぐさま腰を降ろし、床につかない足をブラブラさせている。

その様子はどこからどう見ても、犬が待てをしているときのそれにしか見えなくて思わず口元が緩む。

ちょうどこちらを向いた彼に見られてしまって、一瞬だけ気まずい空気が流れる。そしたらしずおくんの顔が少し赤くなった。


「……な、なんだよ」

『ううん、何でもないよ』


少し早足に机の前まで向かい、プリンとスプーンをしずおくんの前に置いてあげる。

そんな時間さえも惜しいのだろうか、少しだけ体が前のめりになっていた。


『ささ、遠慮しないで食べて良いからね』

「いただきます」

『どうぞ』


一口、また一口と削り取られてゆく黄色。それに合わせてぱくぱくと動くしずおくんの小さな口。

なんだか見ているだけでお腹いっぱいな気分だな、なんて思う。

でも、あんまり黙って食べてるもんだから口に合わなかったのかと心配になった。


『おいしい?』


恐る恐る聞いてみれば、口を開く代わりにコクコクと頷いて見せた。その仕草もまた可愛らしい。

なんかね、お姉さんイケナイものに目覚めちゃいそう。でもしずおくんの為ならショタコンでもロリコンでも、


「すき」

『……へ?』

「だから、すきって言ってんの」


突然投げかけられた言葉に本気で戸惑う私の脳味噌はどうやら考えることを放棄したらしい。思考回路がぶっちぎれた。


『え、ちょ……あの、』

「小さいころからすき。プリン」


小さい頃からって、そんな。……ってあれ、ちょっと待て。今なんつったよこの子。

何かものすごく大事なことを言われた気がするんだけど。よし、とりあえず落ち着け自分。


『あのね、しずおくん。今言ったこと、もっかい言ってくれると嬉しいんだけど』

「小さいころから好きだ、って言った」

『えっと、何が?』

「プリン」

『……え、あぁ…プリン、ね。……プリンが、好きなんだ…そうかそうか!……そうだよね、うん』


うわあ、なんて愚かな勘違いをしてしまったんだろう私ってやつは。

っていうか恥ずかしい!いやむしろ恥ずかしさなんて超えて自分に飽きれそう!

猫型ロボでも呼んで、何秒か前の自分を殴ってやりたい衝動に駆られた。


「どうしたの」

『……あ、いや、なんでもないよ!ごめんね、ちょっと考えごとしてた』

「ふーん。あっそ」

『心配してくれてありがとね』

「べつに」


勝手に突っ走って、勝手に間違えて、勝手に落ち込んで。

ばかみたい、というか……ハッキリ言おう、ここまでくると重度のばかだ私。


『はぁ……、』


この持て余した熱を記憶ごと、どこかへやってしまいたくなった。








鹿


(ほんとはお姉さんも)
(すきって言いたいのにな)







プリンさえ与えればすぐに懐いちゃう可愛いお子さんです。

しずおくん可愛いよマジ天使だよハァハァ。お姉さんが食べちゃうぞ!……嘘ですゴメンナサイ。

書きながらこんな従兄弟ほんとにいたらいいのに、と切実に思ってました。
 
 

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