APH BOX
□籠ノ中ノ花
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空が漆黒に包まれ、帳がすっかりと降ろされた時間帯―――
市の大通りはまだせわしなく人が行き交っている中、その人混みに紛れて裏路地に入っていく一人の青年がいた。
金髪に翡翠のような瞳の彼は、人混みの中では目立つであろう黒スーツを身に纏っていた。
裏路地の一番奥にある扉を開き、禁断へと一歩を踏み出す。
扉を閉めてすぐ、青年と同じく黒スーツの体格の良い男が鋭い目で此方を見てきた。
「鍵は持っているか?」
「あぁ。これだろ?」
懐から銀で出来た十字架をだす。
中央には彼の瞳のように深い緑の翡翠が填められている。
男はそれを幾度と見返し、隅まで見落とすことなく確認すると小さく頷き地下へと繋がる扉を開けた。
「この先にある」
ただそれだけ言い、彼は横へ退けた。
通路は薄暗く、壁に蔦が這っていて黴臭い。
途中には蔦が通路を塞いでいる箇所もあり、銃でそれを払いのけた。
「……ったく、こんな所を通らせるなんて、主催者側もどうかしてるな」
しかし、その言葉は扉を開けたときに覆された。
彼は立ち入ったのだった。
一般の者など立ち入らない領域に―――。