APH BOX

□籠ノ中ノ花
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オークションが始まって1時間近くが経過した。
アーサーはこのオークションには初めての参加だった。

眼前に現れる世界に数少ない貴重な品々を見るだけで心が震わされ、アナウンスも耳に入らなかった。
ただこの瞬間だけは品を見ているだけで満たされる気がした。

「アーサーっ!」

フランシスの声ではっと我にかえる。

「大丈夫?ボーッとしてたけど……」

「あ、あぁ……。」

「そろそろ、今回の中で一番の大物がくると思うよ」
不敵な笑みを浮かべ、ステージを凝視する。
すると、大きな布で覆われた何かが運ばれてきた。

鳥籠をそのまま大きくしたようなその物体の中には影が見えた。
鎖か何かで繋がっているのか耳障りな金属音が運ばれる間響く。

「次の品は今回のオークションの目玉とも言える品です――……」

一気に布が剥がされ、そこに現れたのは―――人。

「人っ?!」

会場がざわつき始め、ちらほらとそれを落とそうとする者達も現れた。
百万、二百万と入札額は増していく。

籠の中にいる彼は、整えられた黒髪に雪のように白い肌をし、その華奢な腕と足首には鉄枷がはめられていた。
鎖が繋がっているその姿は―――、奴隷に近いともいえた。

「ん〜、お兄さん好みの子かも♪入札しようかな……アーサーはどうする?まあ、アーサーは興味ないかもしれないけど……」

「……億」

「え??」

「一億だっ!」

突如破格ともいえる額を宣言したアーサー。
競り合いをしていた者たちの表情も唖然としている。
しかし何よりも、落札されようになっている彼自身が微かに驚いたような表情を浮かべていた。

「なっ………アーサーっ?!何言ってんのっ!一億なんてそんな……」

「これ以上の入札はないと見做し、一億での落札とさせていただきます。」

落ち着きのある声で宣言が下され、ステージから籠が降ろされていく。

「落札おめでとう御座います。落札者の御二方は此方へ……」

黒いコートを身に纏い、フードを被った女性がステージ裏に行き、隠されていた扉を開いた。
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