APH BOX
□籠ノ中ノ花
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この出来事はそれといった騒動にはならなかった。
一般なら騒ぎ立てるところだが、周辺の者はそんな事も一切しなかった。
――むしろそれを余興として楽しんでいたのだ。
「大丈夫?アーサー」
フランシスがアーサーに手を差し伸べたが、彼はそれをぱしんと払いのけた。
「触るなワイン野郎!何でお前が此処にいやがるんだよっ?!」
「お兄さん招待されてんの♪アーサーとはちょっと違う席で」
目の前に出されたのは、金色の縁取りがされた招待状。
「ッ……!?おまっ……何でっ?」
「やっぱ良いねぇ、その反応☆そう、今回のオークションの出品者♪」
ここで行われるのは大規模なオークション。
勿論ただのオークションではない。
世界中という範囲から、市場に出回ることもない貴重な品が集められ、それがオークションにかけられる。
何兆円という膨大な資産のある者だからこそ、このオークションに参加する者も多い。
だが、それは裏世界の者も交えてということで、リスクと隣り合わせの駆け引きになる。
しかし、だからこそ貴重な品に巡り会えるというメリットもある物だった。
「今回はアーサーの欲しがってた奴も出しちゃったんだよね〜」
「てめっ、なんて事しやがるっ!」
胸ぐらに掴みかかり、今にも殴りかかるかというとき―――
「はははっ、お見事だったよ御二方。」
きっちりとスーツを着た老紳士が拍手をしながら歩み寄ってきた。
「………誰だ?この爺」
「ちょっ……言葉を慎んでよアーサー!お兄さんからのお願いっ!」
「まあ、そんなに堅くなることはない。昔の私を見ているようだからね」
穏やかな微笑みを浮かべ、そっとアーサーの手を握りしめる。
そんな老紳士をアーサーはまじまじと見つめた。
「あぁ、挨拶が遅れてしまったね。私はダレン=ヴァルフェレッタ。このオークションの主催者だよ」
「主催者!?」
「君達には良い余興を見せてもらったと皆さんは仰っていたよ。それに、クレアと言えば裏取引の件でマフィア達が総力をあげて捜索していたブラックリストの者だ。君達には是非御礼を言いたくてね」
「いやぁー、そんなの気にしないで良いことなんだけどなぁ♪お兄さん、アーサーを助けるためにやっただけだし」
「そろそろオークションも始まることだ。良い品を落とせることを願っているよ」
軽く会釈し去っていくダレン。
それは英国でいう紳士その物だった。
そのタイミングで照明が落とされ、中央のステージに一点に集められた。
そして、ステージ上にいる 進行役と思われる女性がマイクを自分に向け淡々と宣言した。
「皆様、お待たせいたしました。
オークションを開始させていただきます」