APH BOX
□籠ノ中ノ花
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真紅のカーペットが敷かれた大ホール。
中央と思しき場所にステージが用意されている。
周りには各テーブルが用意され、軽い食事やワインなどのアルコール類が添えられており、そのテーブル各自で会話を楽しんでいた。
ここだけ見ればただの紳士淑女達の集まりにしか見えない。
だが、それは違う。
この場所に集まっているのは裏社会では有名な著名人や組織の者だ。
マフィアのボスや暗殺者集団――……様々な裏に関わる組織の者達がいた。
「アーサー。」
ふいに名が呼ばれ、アーサーと呼ばれた青年が振り返ると、其処にいたのは腰まである長いブロンドヘアーを三つ編みにした女性だった。
「お前は………。」
「覚えていないかしら?なら、どうしたら思い出してもらえるかしらね……。」
背中から首にゆっくりと手を回していくが、当のアーサー本人は表情一つ変えていない。
むしろ冷酷にそれをあしらった。
「お前みたいな奴に会った覚えもないな。こんな色仕掛けだけの奴に」
その様子にむっとしたのか、女性は懐から鋭利な刃を出し、首筋に突きつけ―――
「はいは〜い、そこまでだよマドモアゼル♪」
緊張感のない声。
女性が振り返ると、其処には警備の者と思われる黒スーツの男性達が2人の周りを囲んでいた。
そして、緩くウェーブのかかった髪を真っ青なリボンで結んだ男性の姿。
「フランシスっ……?!」
「なっ……何よ貴方達っ!動いたらアーサーがどうなるか分かってるのかしら?すぐにでもこのナイフで喉を引き裂いて……」
「このナイフって……これのことかな?」
フランシスの手にあったのは、紛れもなく女性が持っていたナイフだった。
「え……?何でっ、何で貴方がそれを……ッ!!」
「お兄さんにかかれば出来ないことはな〜いの♪ほらっ」
ダーツの矢のように放たれたそれは、女性の数センチ横を通り、壁に突き刺さる。
「もう少し本気を出せば、君の髪を切り落とすことだって出来るかもね―――クレアちゃん♪」
「何で私の名を……!」
「これ位みんな分かってるって。フィレジールファミリーのボスっていえば、最近銃器や兵器の裏取引で有名だからさぁ……ちょっとした警戒態勢でいたわけなんだよね。確保を前提で。」
その言葉を合図にしたように、彼女は警備の者達に一気に取り押さえられた。
「離しなさいっ!誰に触れてると思ってんのっ?!ねえっ……」
必死に抵抗するものの、男性の力に勝てるわけもなかった。
「最後に一つ言っておくけど」
「お兄さんは綺麗な物は好きだけど……君だけはいただけないって事」
「アンタみたいな奴に言われたくないわね……ペテン師」
それだけを言い残すと、彼女は警備の者に連れられ、どこかへと消えていった。