隣の若くんSeason2

□隣の若くん 手料理は誰の手に
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今日も氷帝と四天宝寺の練習試合があった
滝夜叉摩耶はまた、日吉の家の台所を借りている
「若、これ今日は私がお弁当作ったの」
すごく、嫌な予感がした
滝夜叉摩耶は満面の笑顔
たこさんウィンナーでは済まされない何かを感じた


氷帝学園テニスコートの周りは今日も人だかり
殆どが跡部目当てだが、どうやら白石ファンもちらほらといるようだ
滝夜叉摩耶はなるべく目立たないように観戦していた



お昼
日吉はカパリと蓋をあけ、即、閉めた
鳳が不思議そうな顔をしていると
日吉は立ち上がり、ずんずん歩いて行ってしまった
慌てて鳳は後を追う

そこには忍足、ケンヤ、向日、宍戸がいた

「忍足さん、これ責任取ってください」
日吉は挨拶もなしにいきなり
ケンヤにお弁当の包みを突き出した
困惑するケンヤにさらに日吉は言い放つ
「滝夜叉摩耶に余計な事しないでください」

状況がよく飲み込めないが、とりあえず蓋を開けてみる

「え?もしかして君が若くんなん?
 俺五才くらいの男の子かと思うてたわ」
「俺もこの弁当は五才児のものだと思います」

それはポケットサイズの怪獣たちのキャラベンだった
ケンヤが渡した、あの紙をみて作ったのだろう
細かいところまできちんと再現してある
「うわー滝夜叉摩耶ちゃん天才やん、クオリティ高ッ」

はしゃぐケンヤとは対照的に、イライラとしている日吉
周りの人たちは遠巻きにそれを見ている

「しゃーないな、じゃ、若くんは俺のベントー食べ」
ほいっと自分の弁当を日吉に渡す
「遠慮なくいただきます」
受け取った日吉はまた、別の席へ着いた






滝夜叉摩耶はひとり、木陰で昼食を摂っていた
滝夜叉摩耶のお弁当はごく普通だった
若のに張り切りすぎて、力尽きてしまったのだった

滝夜叉摩耶の携帯にメールが届く

「ケンヤさんからだ」

件名、『親子ベントー』のメールには写真が添付されていた
滝夜叉摩耶が作ったお弁当の横に、同じ消しゴムが置かれた写真
思わず笑みがこぼれる滝夜叉摩耶

「若、ケンヤさんに見せたのね
 仲良くなれたかしら」
滝夜叉摩耶の脳内では若がケンヤと仲良く並んで楽しそうにしていた

続いて届いたメールには
ケンヤがお弁当を食べている写真がついていた
「あれ?ケンヤさんが食べてるの?若は??」

ピピッとケンヤに電話を掛ける

「もしもし?ケンヤさん?
 若は食べてないの?」
『ああ若くんもちゃんと食べてんで
 滝夜叉摩耶ちゃんのベントーめっちゃうまいわぁ』
「え、あ、ありがとうございます
 でも何で、若のお弁当ケンヤさんが食べているんですか?」
『交換したんや』
「あ、そっかおかず交換ね」
滝夜叉摩耶の中で、仲良しの象徴おかず交換
そんなに仲良くなれたのね、と嬉しくなる滝夜叉摩耶
実際は、お弁当そっくり交換して、大して仲良くもなっていないのだが


その頃、白石は金ちゃんのお守りに大忙しだった
「金ちゃん、ちゃんとベントー食べ
 午後にお腹空くで」
「いやや〜わい、もっと遊びたい!!」
氷帝学園の敷地はかなり広い
金ちゃんはそこいら中走り回って面白いものを見つけることに熱中していた
「そんなこと言ってると
 午後の試合出させへんで」
「え?!そ、それはいやや、白石ちゃんと食べるから堪忍してや」

というわけで
ケンヤたちのいるところへ戻ったときすでに
滝夜叉摩耶のつくったキャラベンは残りわずかとなっていた

「ケンヤ?何食うてんの?」
いつものケンヤの弁当とは違い、何だかカラフルだったので
白石は不思議に思ったのだった
「これすごいんやで!この消しゴムと同じなんや」
ほら、と先程撮った写メをみせる
「ほんまや、すっご、まんまやん
 ケンヤのおばさんすごいなァ」
「これ、おかんが作ったんとちゃうで
 滝夜叉摩耶ちゃんや」
「は??」

「ほんまは若くんのベントーやってんけど
 食べたないゆうから交換したったんや
 見た目もすごいけど、味もめっちゃうまいで」

え?てことは、滝夜叉摩耶ちゃんの手作り弁当をケンヤが食ったっちゅーこと?
何で?俺んは?


いろいろと腑に落ちないことを抱えながら
白石は金ちゃんとお昼を食べた
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