隣の若くんSeason2

□隣の若くん GoGo四天宝寺
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今日はテストの最終日だったので
半日で学校が終わってしまった

滝夜叉摩耶は四天宝寺中の白石のクラスにいた

白石は、委員会のことで先生に呼ばれてしまい
滝夜叉摩耶はクラスで待っていることにした
ちょうどケンヤもいたので、お喋りしながら待っていた


「テスト中にシャーペン転がしちゃって、壊れちゃったんですよ
 お気に入りだったからショックで、テストどころじゃなかったです」
「あはは、ヨユーやなぁ」
「余裕なんてないですよ。いつも点数ぎりぎりなんです
 ほら、このシャーペン、芯が出てこなくなっちゃったんです」
「あーほんまや。どう落っことしたら壊れるんや?」
しゅんとしている滝夜叉摩耶を励まそうと
ケンヤは明るく話してくれた
「俺のシャーペンは落っことしても、
 ちょっとやそっとじゃ壊れへんで」
と言い、ペンケースを開けてシャーペンを見せる
しかし、滝夜叉摩耶は、シャーペンとは違うものに目が釘付けになった

ペンケースの中に、変わった消しゴムを発見したのだ
「その消しゴム、かっこいい!!」

それは、ケンヤの一番のお気に入りだった
消しゴムを集める趣味を誰にも理解してもらえなかったケンヤ

しかし、今ここに一番のお気に入りのコレクションを
褒めてくれる女の子が現れたのだ
胸が温まる思いだった

「そやろ?
 褒めてくれたん滝夜叉摩耶ちゃんだけやわ
 俺、めっちゃ嬉しい」
目をぱちくりさせる滝夜叉摩耶
「え?そうなんですか?
 こんなにかっこいい消しゴムなのに…そうだ!!」
ごそごそと自分の鞄をあさる
目的のケースを取り出して、開いてみせる

「ジャーン」
そこにはパステルカラーのカラフルな消しゴムが詰まっていた
お菓子のかたち、動物のかたち、などなど

「私もたくさんコレクションしてるんです
 使わないんですけど、持ち歩いてるんですよ」
「分かる!!俺もそうや!!」
初めて出会った消しゴム仲間
ケンヤはかなり興奮した
いつもより喋るスピードが二倍だ

消しゴム専用のペンケースを取り出し、
ものすごい勢いで、机に自慢のコレクションを並べだす
圧倒された滝夜叉摩耶
しかし、滝夜叉摩耶にしても
初めて自分のコレクションに興味を示してくれた相手だ
嬉しくて仕方がない
速すぎて、何を言っているのか聞き取れない部分もあったが
雰囲気で理解する


「わーこれ、お弁当の形!かわいい」
「ガチャガチャでみっけて、ソッコーやったんや
 あ、そや、」
ごそごそと鞄の中を漁り、一枚の紙を取り出す
「これ、この消しゴムと同じベントーが作れるらしいで
 俺作らへんから滝夜叉摩耶ちゃんにやるわ」
「わー、ありがとうございます
 若に作ってあげよー」
「若?」
「お隣さんです」
「へー」
ケンヤの頭の中に5才くらいでおめめくりくり、
ちょっぴりしもぶくれの男の子“若くん”が浮かんだ

実際は一つ下の目つきの悪い人だとも知らず…


一通り、コレクションを見せたケンヤは落ち着いたのか
少しスピードを抑え、
滝夜叉摩耶のコレクションを見たいといった

滝夜叉摩耶は嬉しくなって
頬を赤らめながら、ひとつひとつ説明しながら取り出す
「これ、鉛筆のキャップについてた消しゴムです
 ちっちゃくて可愛いでしょう?
 いちごとーバナナとーメロンでしょー」
ちまちまと机の上に並べていく
なんとも女の子らしいコレクション
「これは、女の子の形なんです
 小さいときからの、宝物!」
少し大きめのその消しゴムは
髪をおだんごにした、おめめぱっちりの女の子だった
昭和レトロな感じのそれは
今、買ってきたばかりのように、キレイだった
本当に大切にしてきたのだろう

ケンヤは滝夜叉摩耶との心の距離がぐっと縮まった思いだった
互いの宝物を見せ合い、共感し合う
なんとも心地よい時間だった


そんなこんなお話していると
白石が戻ってきた
「滝夜叉摩耶ちゃんお待たせ」
「白石さん。お疲れ様」
「白石、お疲れ!!!
 滝夜叉摩耶ちゃんめっちゃええ彼女やん
 羨ましいわー」

突然何故だか褒められた滝夜叉摩耶は頬を赤らめる

「せやろ?惚れたらあかんで」
「あー、それはないわ」
あはは、と笑うケンヤ

意外と失礼な人だ
頬を赤らめ損だ
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