隣の若くんSeason2

□隣の若くん 遠足大波乱後編
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滝夜叉摩耶と日吉は港町のお店に来ていた

「これ欲しいな…」

滝夜叉摩耶は茶色いふわふわのクマちゃんを抱えていた
うっとりとした瞳で、毛並みを整えるように撫でていた

「買えばいいじゃないか」
「だってお小遣いたりないもん」
「じゃあ我慢するんだな
 買わないなら行くぞ」

滝夜叉摩耶はしぶしぶクマを元の位置に戻した
店を出ようと出口に向かう時も
ずっとクマの方を見ていた

そういえば、滝夜叉摩耶が何かを欲しいと言うことは滅多になかった
欲しいものがあるときは、誕生日とクリスマスまで待つか、
月の小遣いを熱心に溜め込んで購入していた

両親は滝夜叉摩耶に、とても甘い
ねだればきっと何でも買い与えるだろう
実際、滝夜叉摩耶の部屋の家具は
中学生の娘に与えるものにしては高額すぎる
それが、逆に滝夜叉摩耶を遠慮がちにさせるのだろう

日吉は溜息を吐き、売り場へ戻った
不思議な顔をした滝夜叉摩耶が後ろからついて来る


「俺が半分出してやるから、さっさと買ってこい」
クマを押し付けるように滝夜叉摩耶に手渡す
滝夜叉摩耶の瞳が困惑の色に染まる
「そのうち、返せばいい」
滝夜叉摩耶は頬を赤くして、勢いよく返事をした
「うん、若ありがとう!!」


滝夜叉摩耶の後姿を見ながら
自分が一番滝夜叉摩耶に甘い、と
日吉は思った
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