隣の若くんSeason2

□隣の若くん 手料理は誰の手に
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滝夜叉摩耶は驚いた
道に、金ちゃんがうずくまっている
「金ちゃん?
 こんなところでどうしたの?」
「あーねーちゃーん、
 ケンヤとはぐれてしもてん
 ここ何処か分からんし、お腹空いたし」
金ちゃんは半分泣いていた

「家、すぐそこなの
 何か食べる?」
「え?ええんか?
 ねーちゃん、親切やな」

金ちゃんは嬉しそうにぴょんぴょんと付いていった
(ネコちゃんみたい)
滝夜叉摩耶の目にはしっぽが見えるようだった




白石の携帯に滝夜叉摩耶からの着信
慌ててとる白石
「滝夜叉摩耶ちゃん?どないしたん?」
「あ、もしもし日吉です」
若干うきうきとした声の白石
しかし予想外にも、相手は日吉だった
しかもかなり機嫌が悪い
「え?日吉くん?」
どないしたん?と困惑気味に続ける白石
「こどもを引き取りに来てください」
「子供?」
「あの遠山とかいうこどもです」
「金ちゃん?」
状況が全く掴めない白石
「滝夜叉摩耶だけでも騒がしいのに
 子供が二人になったら手がつけられない」
それじゃあよろしくお願いしますよ、と
問答無用で電話を切られる




金ちゃんと滝夜叉摩耶は居間のテレビゲームでフィーバーしていた
金ちゃんが腕をぶんぶん振り回すので
危なくないように回りの物を遠くにどかしていた


「金ちゃん、上手くなったじゃない
 でも、負けないからねっ」
「ねーちゃん、それ使うたらあかんでー、反則や」


ギャーギャーと騒いでいたらチャイムが鳴った
あまりうるさいので、聞こえないところだった

中断して、玄関へ向かった
「白石さん?」
「金ちゃん、おるんやて?
 迷惑かけとらんかったか?」
済まなそうに笑う白石
その声を聞いて、金ちゃんが居間から飛び出してきた
「あー白石やー、迎えに来てくれたん?
 けどわいまだ帰らへんで」
「金ちゃん」
咎めるように言う白石
が、いつものことなのだろう
金ちゃんは気にしていない
「まだ勝負ついてへんのや
 ねーちゃん意外と上手いんや」
「金ちゃんもう遅いし、迷惑やろ」
「いやや
 ねーちゃん、まだええよな?な?」
「え、えっと」
ちょっと戸惑う滝夜叉摩耶
白石が折角迎えに来てくれたのだし
一人では帰れないのだから、やっぱり今帰った方が…
などと、考えていると
白石が溜息を吐いた
「金ちゃん、そんなごんたばっかり言うてると…」
しゅるしゅると包帯を解いていく
「わー、毒手だけはかんにんや
 まだ死にとうない」
金ちゃんは血相を変え、
居間に置いたままのラケットを取りにいった


「じゃあねーちゃん、またなー」
ぶんぶんと手をふる金ちゃんに
滝夜叉摩耶も大きく手を振り返す

まるで弟ができたみたいな気分になれた
とても楽しいひとときだった
しかし、居間に戻ると現実に引き戻された

(パパとママが帰ってくる前に片付けなきゃ)


金ちゃんと白石は並んで歩いていた
「ねーちゃんのオムライスゴッツうまいでぇ
 わい、また食べに行くからって伝えてや」
金ちゃんはいつもの笑顔で悪びれもなく喋る
「え?金ちゃん滝夜叉摩耶ちゃんにご飯作ってもらったん?」
「わい、お腹空いてもうてんもん」
白石でもまだ、食べたことがないのに

「ケチャップでヒョウの絵描いてくれてん
 どうみてもネコやったけど…
 具がめっちゃ入っとってうまいんやー
 ねーちゃん才能あんでぇ」
「そ、そか」
ニコニコと満面の笑みの金ちゃんに対し
笑顔が引きつる白石であった
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