隣の若くんSeason1

□隣の若くん 守りたい人
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部活が終わり、着替える
すごく嫌な予感がする
いつもより早く支度を終え家路に着く

自室に戻った日吉は滝夜叉摩耶の部屋のカーテンが開いているのに気付く
そして、床に倒れこみ少し苦しそうにしている滝夜叉摩耶にも

日吉は焦った
今の時間ならまだ滝夜叉摩耶の両親は帰っていないはずだ
玄関は開いていない
怖がりの滝夜叉摩耶は一人で家にいる時は鍵をかける
部屋を見回し
胴着をかけてある竿を手にする

いつでも窓の鍵だけは開けていて
無用心だといつも思っていたが
今はそれがありがたかった

滝夜叉摩耶の部屋の窓をそれで開ける
じりじりと少しずつ
イライラした
早く、早く開いてくれ

どうにか開けきると
日吉はひらりと飛び移る
滝夜叉摩耶の部屋に降り立ち、滝夜叉摩耶を抱き起こす
額に手を当ててみると、熱かった

「窓を飛び移っちゃ駄目なんだよ、若」
はぁはぁと熱い息を吐きながら、滝夜叉摩耶が笑う
「そんなこと、言ってる場合じゃないだろ?
 大体禁止されたのは俺じゃない」

まだ幼稚舎に通っていた頃
身の軽い日吉が窓を飛び移ってみせた
感激した滝夜叉摩耶が自分も飛ぼうとして、落ちそうになったことがあった
飛ぶ瞬間に足を滑らせ、咄嗟に窓にしがみついた
日吉が引っ張り上げなければ、滝夜叉摩耶は体重を支えきれずに落ちていただろう
そんなことがあり、窓の飛び移りは禁止された

「ひどい熱だ、汗もかいてる
 着替えくらいしろ、できるか?」
「うん…」
答えるが滝夜叉摩耶はぐったりとして、起き上がる気配が無い
仕方なく、そのままベッドに寝かせ、ネクタイを解いてやる
薄い布団を被せてから、シャツのボタンを一つずつ外していく
「ん、ん…?」
「おとなしく寝てろ
 汗で張り付いて気持ちが悪いだろう
 それにこのまま寝たら、制服がしわになる」

パジャマを出すため、クロゼットを開けた
奥に、古いパジャマを見つけた
丈が短くなって着られなくなってしまったのにまだとってあった
一番のお気に入りで
これが着られなくなった時、滝夜叉摩耶は大泣きした
あの時もカーテンを閉め切って一人塞ぎ込んでいた


滝夜叉摩耶の今一番気に入りのパジャマを出し、着替えさせる
スカートを脱がせる時、少しためらった
慎重にチャックを開ける
滝夜叉摩耶の少し太めの脚に、パジャマを穿かせスカートを取る

毛布を直し、シャツを脱がせる
下着も替えた方がいいだろうか?
下着のシャツを触ると湿っていた
もう一度クローゼットの前にいくが、下着の場所が分からない
ピンク色の小さな引き出しが隅に置いてあった
これか?と開けてみると、パンツが詰まっていた
ばんっと閉め、もう一つ下を開けてみる
そこには目的のシャツがあった
奥に、ブラジャーがあったが、見ないように素早く閉める
シャツを一枚とり、滝夜叉摩耶に着せる
腕がくにゃくにゃとして、通しづらい
女の子の体はとても頼りないものなのだと実感した
上のパジャマも着せ、なんとか着替え終わった
日吉の方が汗をかいてしまった


滝夜叉摩耶はうなされていた
洗面所へ行き、タオルをとる
額の汗をふいてやると、少し落ち着いた顔をした

下へ降りて、救急箱を開ける
ヒエピタを発見し、一枚とり
冷蔵庫からポカリを出して上へ向かう

「滝夜叉摩耶?少しは楽になったか?」
滝夜叉摩耶は薄く目を開け、にこりと微笑む
「うん、若が来てくれたから…」
「もう少しでおばさんも帰ってくる
 少し寝ていろ」
「うん」

日吉が部屋に戻ろうとした時
滝夜叉摩耶の携帯が目にとまる
拾い上げ、開いてみると
電源が入っていなかった

電源をいれ、電話を掛ける
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