隣の若くんSeason1

□隣の若くん 守りたい人
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日吉は噂というものに疎かった
周りが話していることに興味がなかったし
この噂自体が日吉を避けて行われていた

ということがあって、日吉が事を知った時には
初めの告白の日から一週間以上経っていた

「ねぇ、日吉、最近滝夜叉摩耶ちゃんよく呼び出されてるみたいだよ?
 俺のクラスの奴も昨日告白して振られたんだって、やぱりさぁあの噂の所為だよね
 滝夜叉摩耶ちゃんは大丈夫?疲れちゃうよね」
「は?何の話だ?」
部室に向かう途中、鳳が話しかけてきた
「え?日吉知らないの?
 日吉が滝夜叉摩耶ちゃんを振ったんだって噂があるんだよ
 そんなことあるわけないのにね
 でも皆信じちゃって、滝夜叉摩耶ちゃんに告白しにいってるんだよ?
 滝夜叉摩耶ちゃんから聞いてないの?」
聞いてなかったし、気付かなかった
いつもカーテンが閉まっていたし
彼氏と電話でもしているのかと思っていた
滝夜叉摩耶のことだ、もしかしたら一人、塞ぎ込んでいたいたのかもしれない
日吉の脳裏に丸くなって寂しそうに眠る滝夜叉摩耶の姿が浮かんだ




今日も告白は続いた
お断りする時、胸が痛んだ
応えてあげられない自分と、思いが届かなかった相手
もしかしたら、この人のことが好きな子がいるかもしれない
この人が自分ではない子に告白したと知ったら、どう思うだろう
私なら耐えられない
想像しただけで死んでしまいたくなる

滝夜叉摩耶から笑顔が消え
友人たちはとても心配になった
ただ疲れているだけだから心配いらないと短く伝える

もう誰の顔も見たくなかった
白石の顔でさえも

あの女の子の楽しそうな顔を思い出した
胸がチクチクと痛い
嬉しそうに笑う女の子の顔が浮かぶ度
滝夜叉摩耶の顔は暗くなる
白石の腕に絡みつく白く細い腕


白石さんは学校できっと何人もの女の子とお喋りしているんだろう
白石さんはお話が上手いから、
きっとお話した子は白石さんのことを好きになってしまう
とっても魅力的で素敵な女の子が
白石と腕を組んで歩いている姿が思い浮かぶ

胸がちりちりと痛む
頭が重い


家に帰り着いた滝夜叉摩耶はカーテンを開けてみる
当然のことながら日吉の姿は無い
今は部活中だ
誰もいない部屋をみつめていた滝夜叉摩耶は
床に倒れこんでしまった
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