隣の若くんSeason1

□隣の若くん 彼氏はだあれ?
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日吉、鳳、樺地はめずらしく三人でカフェテリアにいた
今日は何故か混んでいて、座るところがなかったのだ
鳳が一人うるさく喋っているが、残り二人は聞いているのかいないのか
相槌も打たず、もくもくと食事を続ける

「そういえば、最近滝夜叉摩耶ちゃんすぐに帰っちゃうよね?
 前は、茶道部の子たちと一緒に帰ったりとかしてたみたいだけど、
 どうしたのかな?」
日吉知ってる?と聞いてくる
無視してもよかったが、鳳はかなりしつこい
滝夜叉摩耶のことになると特にだ
「彼氏のとこに行ってるんだろ?」

学校が割りと近いので、急いで帰って自転車に乗ると
部活の見学ができるらしい
白石は部活後も残って練習しているらしいので
少しだけ覗いて帰るのだそうだ
あまり意味がなさそうだが
本人は満足しているみたいなので何も言わない

「え?か、彼氏??誰、誰?日吉じゃなくて?」
「何で俺なんだ」
うざったいと思っていると
跡部がテーブルに近づいてきた
忍足たちの席にいたが、樺地を見つけてやって来たのだろう
「珍しいな、お前ら三人で食事とは」
「跡部先輩」
「何の話をしていたんだ?」
言いながら、自分の皿をテーブルに置く
どうやらここで食事をするつもりらしい
「滝夜叉摩耶さんの、彼氏の話、です」
樺地が説明する
「ああ、あの白石とかいうやつか」
「え?白石さんってあの?
 跡部先輩はご存知だったんですか?」
当たり前だというように、得意げな顔をする
「あいつも酔狂な男だな
 彼氏がいるも同然の女をわざわざ彼女にするんだからな」
日吉に向かって喋る
日吉は下を向いて、聞こえないふり
構わず跡部は喋り続ける
「人の女に手ェ出すわりに、趣味がいまいちだしな」
聞こえないふり
かわりに鳳が喋り出す
「俺も滝夜叉摩耶ちゃんが日吉じゃない人を彼氏にするなんて
 全然信じられないですよ」
日吉はもう食事を諦めて、席を立とうとしていた
そんな日吉に鳳はとんでもない一言を放つ

「だってさ、日吉、よく滝夜叉摩耶ちゃんとデートに行ってたじゃない?
 滝夜叉摩耶ちゃんが嬉しそうに写真みせてくれたよ
 それで付き合ってないなんて、それこそ信じられないけどね」

鳳のやつ、余計な事を

「日吉がデートだ?
 おい日吉本当なのか?」
「強制的に連れ回されただけです
 鳳、余計な事言うな
 大体誰が好き好んであんなとこへ行くか
 中学生にもなって、変な着ぐるみのいるレストランで大喜びしてるんだぞ?」
「着ぐるみのいるレストラン?なんだそれは?」
「写真見ます?」
鳳のやつなんだって持ち歩いてんだ。
「ふ、なんだこの間抜けな人形は
 これお前が撮ったのか?」

あの時のことは思い出したくない
最悪の記憶だ

周りは幼稚園児と母親ばっかりだし
中学生なんて親子でもいなかった
ウエイトレスの視線が痛かった

うさぎがプリントされたホットケーキが食べたいだの
チョコのケーキがおいしかったからまた食べるだの
ちょこまかと動き回るからかなり目立っていたが本人は気にならないらしい

一応気を使っているのか、
子供たちに優先させてケーキなどを選んでいたが
綿あめの機械を発見すると、目の色が変わった

「若、私、あれ作ってきてもいい?」
「勝手に作ればいいだろ?」
「うん、若の分も作ってくる!」
さっと飛び出して行くと綿あめ製造機の前に陣取り
ピンクのふわふわを作り出していた



しばらく放心していた日吉
跡部が訝しげに顔を覗きこむ
「おい、日吉、お前が撮ったのかと聞いている」
「そうですよ」
日吉は得意の嫌な顔をしながら答える
「他にも、いろんなとこ行ってるよね、滝夜叉摩耶ちゃんと
 俺、毎回写真貰うんですよ、ほらこれとか」
鳳はここぞとばかりにコレクションを見せびらかす
日吉でも忘れていたような写真があった

着ぐるみと撮っている写真もたくさんあったが
殆どが有名なデートスポットでの写真だった
「何だ、殆どありきたりなデートスポットじゃねえか」
「テレビとかで見ると、行きたくなっちゃうらしいですよ
 このアイス彼氏と一緒に食べると
 幸せになれるって有名なんですよ」
カラフルなアイスを持って嬉しそうに笑う滝夜叉摩耶の写真
有名な店のチョコレートを使っていて
とても美味しくて大人気なのだと友人に聞いて、連れ出されたのだ
「あいつは、何かあるとすぐ俺に連れて行けと喚くんです
 こっちはいい迷惑ですよ」
不機嫌そうに言う日吉に
(それを付き合ってるって言うんだ)
と跡部は心の中で突っ込みをいれる
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