05/07の日記

20:11
aph(伊成り代わり)
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イタリア成り代わり



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時はWW1。


俺はドイツ。
今、そのローマ帝国の子孫とやらと戦っている筈なんだが…


「おかしい。木の棒1本で楽々国境越えしてしまったぞ!」


自分の右手に持っている木の棒を見ながらルートヴィッヒは悩んだ。


まさかこんなヴルスト食う余裕がある国境越えは初めてだ!敵を見かけてもそそくさとどこかへ行ってしまうし…これは夢か?


こんなことあってもいいのかという程苦い顔をするルートヴィッヒ。
それもそうだ。今はWW1、国通しはギスギスしている最中だし、ましてやそんな中でこんなにも余裕のある事なんてそうそうない。いや絶対に普通はない。


「いやしかし油断はできん!奴の事だ、きっと何か策を練ってあるに違いない」


この状態は嘘だと自分に問い掛けるように草を掻き分けながら進んでいく。


「ここは慎重に…ん?」


草を通り抜けた先に合ったのは、大きなトマト箱。しかも道のど真ん中に置いてある。


「ふむ…こんな所にトマト箱?」


疑問を感じたルートヴィッヒは、コツコツて木の棒でトマト箱を叩く。





すると…





ガタガタッ!

「うわっ!」


「『うわっ』…?」



突然トマト箱の中から女性の声が聞こえたのだ。
これは怪しい…。



「や…やぁ!私はトマト箱の妖精だよ!君と友達になりに来たんだ。一緒に遊ぼう!」

「中に人がいるようだ…」

「中に人なんかいないよ!開けないで!」


更に声を聞き、確実に人がいると断定したルートヴィッヒは箱を開けようとする。
それを阻止しようと、声は人がいないと言う。
それを信じる人はまずいないだろう。
ぎぎぎぎぎと蓋を上げるルートヴィッヒ。


「やめてよ!私の臓物なんか見てどうするの!?」

「くそ…重い…!」



あと少しで蓋が開く…!

よし、来た!



「正体を現せ!!」

「うわぁあああごめんなさいごめんなさいぃぃぃ!私トマト箱の妖精じゃないんです!マジで撃つのだけは勘弁してください何でもするから撃たないでぇ!」


大きな涙の粒をポロポロ流しながら出てきたのは、左側についた巻き毛が特徴的な女性だった。
彼女は泣きながら、必死に命乞いをしている。


「私処女だし撃っても全然楽しくないよ!本当にごめんなさい!私は良いイタリア人だよ、バイエルンに親戚がいるの!」


「……」



ん…?あれ?

こいつ、俺が今戦ってる奴か?確かローマの子孫だとか何だとか聞いてたんだが…。

いやまさか…、いくら何でも…女性には失礼だがコレはないよな…コレは。
こいつは一般イタリア人か何かに違いない。
うん絶対そうだ。
じゃなかったら何だコレ。


明らかに不信な目で女性を見る。それでも泣き止むことはないので、しょうがなく彼女を箱から出すことにした。
彼女の脇の下に手を伸ばし、よいしょと上に上げると、彼女は「ひぃっ」と顔を歪め、更に泣き出してしまった。


「うわぁああああん!最後に美味しいパスタが食べたかったよぉー!!」


止まらない涙に焦るルートヴィッヒ。

だが彼女、じっと見ているとなんか…


可愛い。


小動物のような小柄な身で、眉を下げながら泣きじゃくる彼女を見ていると、こう、…更に泣かしたい。
…と!!そんな事考えている暇はない!
ルートヴィッヒは、彼女に質問をしてみた。


「1つ質問がある…。お…、お前は俺の敵で、ローマ帝国の子孫って奴か?」


すると、今まで泣いていた彼女は、涙は残っているもののみるみる笑顔になっていった。


「え…ローマお祖父ちゃん知ってるの?私はイタリアのカインゼル!お祖父ちゃんの孫だよ。パスタとピッツァが大好きなお茶目さんです!」



この泣き虫娘が本当に…!?



「なんだ、あなた怖い人かと思っちゃったよー。話せるじゃん」


驚きを隠せないルートヴィッヒ。
それもそのはず。彼の知っているローマ帝国という者は、壮大で巨大な力を持っている…という、彼女…カインゼルとかまったく逆の人物だからだ。


はっ、そうか!これは罠か…!害な無さそうな顔をして隙をつくつもり…


本当にそうか?カインゼルの泣き方はいくらなんでも作れるようなものではない。
もしかしたら彼女の言っている事は本当なのではないか?
多少不信な点は沢山あるものの、ルートヴィッヒはカインゼルの言っている事を信じてみようと思った。
とりあえず、座り込んでる彼女を立たせなければ…。


「わかった、お前の言う言葉を信じよう。とにかく、いつまでもそこに座り込んでいないで立て」

「あなたとは友達になれそ…きゃああぇああああ!!!!」


手を貸そうとルートヴィッヒが立ち上がり、カイの前に来ると、怖かったのかカイはまた悲鳴を上げ今度はひたすら後ろに下がっていった。


「(何故だ…)」


このときルートヴィッヒは、この出会いが自分の運命をそれほどまでに変えるとは思ってもみなかったという…。






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