†DRRR!!花園†
□〜DOLLARS〜日本軍関東地区副都心支部池袋基地 十六夜″編2
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「楸ってのと一緒に、って思ってんなら、本気で止めとけ。甘すぎる。逃げた方がいい。いや、頼むから、諦めてくれ………」
「え……?」
「何……?」
「何、され……え……?」
「頼む、俺の上官が来る前に、早く」
千景は必死に言いつのった。
「拷問官とはちょっと違ぇんだけど……女の担当は、俺なんだ。俺はあんな……
俺には、出来ねぇよ……したかねぇんだよ、だから、頼む、諦めてくれ」
「………死ぬの?」
「え?」
「皆は……殺されるの?」
「……分からねぇ。あの人の気分しだいがほとんどだからな……」
でも、ほぼ死ぬのが100%。
「……俺たちは、軍なんだ。それを消そうとするってことぁ、そういうことだぜ。覚悟はあったはずだろ?」
「………っ、そう、だね……」
「瑞希……」
「ごめんね、楸、ごめんね………」
「「……っ」」
3人で、泣いた。
それぞれの想い人との、別れを感じて。
千景は唇を噛んだが、これ以上は自分は関われない。
「もし、助かったら……伝えてください」
「待ってる″って」
「………ああ」
本気で好きなんだな。
走り去る彼女らの背を見送って、千景はぐ、と拳を握りしめた。
例え、どんなに非道な人間でも、大切なものを失うのは、辛い。
それを誰よりもよく知る千景には、あまりにも辛すぎる選択だった。
「あれ?何だ、逃がしちゃったんだ?千景くん」
「・・・・・・・・・アンタ」
「仮にも俺、上官なんだけどなぁ。ま、いいけどね。タメでも、別に逃がしちゃっても。どうせ殺しちゃったし」
「………っ」
千景は、静かに目を閉じた。
「でもさぁ、困るんだよね」
「……何が」
「だってさぁ、そっちの仕事、全然してないじゃん。まぁ、使えそうだと思ったのも少ないけど。
……使えるものはとっておくのが普通だよね。そのための切り札が……女なんじゃないか」
こっち側に引き込むための。
いわば、それは人質だ。
「さすがに、自分の女を自分の目の前で、他の男に犯されるところなんて、見たくないだろうしさぁ」
千景は、臨也から完全に顔を背けた。
「ま、今日はもうしょうがないからいいよ。でも、次は……ちゃんと仕事、してもらうからね」
「…………」
返事はなかったが、臨也はさっさと引き上げていった。
「………大丈夫か」
「………門田」
傾きかけた満月に照らされて、逆光の千景が振り向いた。
「唇切れてんじゃねぇか……」
口をごしごしと拭いてやる。
「………門田」
「なんだ?」
「そこは舐めるべきだろ………」
「………ったく………」
まだうっすらとにじんでくる血を、ぺろ、と舐めた。
「ん………っ!」
そのまま、舌をちゅう、と吸われた。
「はぁ………」
「………門田」
「ん………?」
「……門田、門田………」
「………千景」
何度も何度も、名前を呼ぶ。
それだけで、痛いくらいに伝わってくる。
千景は、優しい。
こうして、他人のために涙を流せるほどに。
そして、そんな傷ついた千景を癒せるのは、門田1人だった。
「………ほら、戻んぞ」
「……………」
門田の肩に顔をうずめて泣いていた千景は、ようやく顔を上げた。
帽子で表情を隠して、誘われるまま、大人しくついていく。
心優しきが故に、傷つけられた心。