†DRRR!!花園†

□〜DOLLARS〜日本軍関東地区副都心支部池袋基地 十六夜″編2
2ページ/5ページ


「楸ってのと一緒に、って思ってんなら、本気で止めとけ。甘すぎる。逃げた方がいい。いや、頼むから、諦めてくれ………」

「え……?」

「何……?」

「何、され……え……?」

「頼む、俺の上官が来る前に、早く」


千景は必死に言いつのった。


「拷問官とはちょっと違ぇんだけど……女の担当は、俺なんだ。俺はあんな……
俺には、出来ねぇよ……したかねぇんだよ、だから、頼む、諦めてくれ」

「………死ぬの?」

「え?」

「皆は……殺されるの?」

「……分からねぇ。あの人の気分しだいがほとんどだからな……」


でも、ほぼ死ぬのが100%。


「……俺たちは、軍なんだ。それを消そうとするってことぁ、そういうことだぜ。覚悟はあったはずだろ?」

「………っ、そう、だね……」

「瑞希……」

「ごめんね、楸、ごめんね………」

「「……っ」」


3人で、泣いた。

それぞれの想い人との、別れを感じて。


千景は唇を噛んだが、これ以上は自分は関われない。


「もし、助かったら……伝えてください」








「待ってる″って」







「………ああ」


本気で好きなんだな。


走り去る彼女らの背を見送って、千景はぐ、と拳を握りしめた。



例え、どんなに非道な人間でも、大切なものを失うのは、辛い。


それを誰よりもよく知る千景には、あまりにも辛すぎる選択だった。


「あれ?何だ、逃がしちゃったんだ?千景くん」

「・・・・・・・・・アンタ」

「仮にも俺、上官なんだけどなぁ。ま、いいけどね。タメでも、別に逃がしちゃっても。どうせ殺しちゃったし」

「………っ」


千景は、静かに目を閉じた。


「でもさぁ、困るんだよね」

「……何が」

「だってさぁ、そっちの仕事、全然してないじゃん。まぁ、使えそうだと思ったのも少ないけど。
……使えるものはとっておくのが普通だよね。そのための切り札が……女なんじゃないか」


こっち側に引き込むための。


いわば、それは人質だ。





「さすがに、自分の女を自分の目の前で、他の男に犯されるところなんて、見たくないだろうしさぁ」





千景は、臨也から完全に顔を背けた。


「ま、今日はもうしょうがないからいいよ。でも、次は……ちゃんと仕事、してもらうからね」

「…………」


返事はなかったが、臨也はさっさと引き上げていった。


「………大丈夫か」

「………門田」


傾きかけた満月に照らされて、逆光の千景が振り向いた。


「唇切れてんじゃねぇか……」


口をごしごしと拭いてやる。


「………門田」

「なんだ?」

「そこは舐めるべきだろ………」

「………ったく………」


まだうっすらとにじんでくる血を、ぺろ、と舐めた。


「ん………っ!」


そのまま、舌をちゅう、と吸われた。


「はぁ………」

「………門田」

「ん………?」

「……門田、門田………」

「………千景」


何度も何度も、名前を呼ぶ。


それだけで、痛いくらいに伝わってくる。



千景は、優しい。



こうして、他人のために涙を流せるほどに。




そして、そんな傷ついた千景を癒せるのは、門田1人だった。


「………ほら、戻んぞ」

「……………」


門田の肩に顔をうずめて泣いていた千景は、ようやく顔を上げた。

帽子で表情を隠して、誘われるまま、大人しくついていく。


心優しきが故に、傷つけられた心。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ