†REBORN!!花園†
□紅と闇の中の欲望
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初めて会ったとき、そのあまりの綺麗さに見とれた。
夜に浮かぶ真円(しんえん)の月と、それに照らされた黒い海を、ベランダ越しに背景にして、肩から血を流しながら現れた金髪の男。
血に飢えた、真紅の瞳をして。
よほど飢えていたのか、ちょうどその時怪我をしていた僕の手を、食い入るように見つめていた。
だから、気づいた。
―――この人は、吸血鬼(ヴァンパイア)。
恐くはなかった。
恐怖だとか、畏怖だとか、そんな感情などどこにもなかった。
ただ、彼が綺麗だった。
蒼白くあたりを照らす、月光に光る金色の髪も。
破れた袖からのぞく、ヴァンパイアである証の刺青も。
暗闇の中で、妖しくも鋭い色を放つ血色の瞳も。
彼の流す血液さえ、綺麗だと思った。
僕が見とれたまま、ずっと動かないままでいると、彼は苦しげに、口を開いた。
『あのさ……悪ぃけど、ちょっとガーゼかなんか、くれねぇか……?血ィ止まんなくてさ……』
『……いいよ、入りなよ。手当てしてあげるから』
ハッと我に返った僕は、彼を室内に招き入れた。
救急箱をとってくると、彼は驚いた表情にわずかな警戒をにじませて、
ベランダに降り立った体制のまま、こちらを見ていた。
『……何してるの、早く入りなよ』
『……オレが何だか知ってて言ってるのか?お前……』
『…………』
思わずため息をついてしまった。
『……知ってるよ、貴方ヴァンパイアでしょ?いいから早く入りなよ、さっきからそこの窓開けっ放しで、寒いんだけど』
『………………』
そう言うと、彼は警戒したまま中に入り、そっと窓を閉めた。
僕は救急箱を持ってソファに座り、隣をぽんぽんと叩いた。
『こっちに来なよ。……治療以外は何もしないから。何かしようにも、僕はヴァンパイアに何が効くのかなんて知らないから、何もしようがないしね』
『………』
『……十字架とかニンニクとかくいとか、全部持ってきて試してみようか?』
『や、それは勘弁だぜ……』
半ば脅迫まがいの物騒なことを口にすると、「参った」というように両手を上げて大人しく隣に座った。
人間と同じ治療法でいいものか迷ったが、それ以外の方法も特に思い浮かばなかったので、
とりあえず一般的な止血をし、傷口を消毒する。
『止まったな……サンキュ』
『………』
『さて、と………』
『……どこに行くつもり?』
『……さぁな……………』
再びベランダに出て、飛び立つ体勢をとった彼に、思わず声をかける。
そのとき返された返事が、あまりにも哀しくて、淋しげに聞こえたから。
『分かんねーけど、このままここに居るわけにもいかねーし。…手当てしてくれて、マジサンキュな』
『待ちなよ』
『?』
『要らないの?』
『え?何が……』
一拍置いて、雲雀は言い切った。
『僕の血』
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