†FFZ花園†
□クラウド誕!
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「んじゃ、行ってきます」
「おう、行ってらっしゃい」
(……よしっ)
いつものとおり、クラウドは出かけて行った。
計画通りに事が進んでいることに、ザックスは笑みを浮かべずには居られなかった。
(だって今日は……)
何といっても、愛するクラウドの誕生日。
本人は全くもってそのことを忘れてしまっている。
が、ザックスには好都合。
「やっぱり驚かしたいもんな〜」
プレゼントも、もう買ってある。
(似合うだろうな〜、クラウドになら)
いや、この世にクラウドに似合わないものなんてない!
一人でニヤけながら街に出て、買い物をするという、傍目から気持ち悪がられるというリアクションを気にも留めず、ソルジャー1stはルンルンとささやかなパーティーのための買い物を済ませていくのだった……
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「………よしっ、上出来!!」
作業に集中していたザックスは、やっと顔を上げた。
「ふ〜、頑張った頑張った」
ザックスが集中していた作業―――板チョコにチョコペンで「クラウド誕生日おめでとう」と書く作業は、ザックスの思っていた以上に、難しい作業だった。
「や〜それにしても俺……」
自分で言うのもなんだけど、すげぇ。
「……こんなこと、今まで一度もなかったしなー」
もっとも、する相手もいなかったし。
クラウドだけだ。
テーブルにずらりと並んだ豪華な食事の数々を見て、ザックスは満足そうにうんうんとうなずく。
あとは、クラウドの帰りを待つだけだ。
ガチャッ。
「ただい……」
パーンッ!
「!?」
「おかえり!Happy birthday、クラウド!!」
「ザックス……え?ハッピーバースデーって……今日、俺の誕生日?」
「そうだよ!やぁっぱり忘れてたな?」
「そんなの、いちいち覚えてないよ。年取ったって別に……それにしてもザックス、よく覚えてたな?」
「当たり前だ、クラウドのこと俺が忘れるわけねーだろ!ほら、俺頑張ったんだぜっ」
「わ……すご……!」
リビングに入って最初に見た、豪華な食事の数々。
「これ、全部ザックスが作ったのか?」
「おう!」
「すげぇ!やっぱ、ザックスは器用だよなぁ、羨ましい」
「ほらほら、早く食おうぜ、冷めちまう」
「うん」
クラウドをソファに座らせ、ザックスは一度キッチンに引っ込むと、冷蔵庫から酒を持ちだしてきた。
グラスに2人分注いで、小さく突き合わせる。
「クラウド、誕生日おめでとう」
「うん……ありがとう、ザックス」
「ケーキも作ったんだぜ」
「ほんと!?見たい見たい!」
「後でのお楽しみ〜」
「ケチ」
そういいつつも、クラウドは嬉しそうに笑っている。
(良かった……喜んでくれて)
頑張った甲斐があったと思う。
(ま、クラウドのためなら、俺はなんだってするけどね)
この、綺麗な笑顔が見られるなら。
「はい、俺特製のバースデーケーキ♪」
「わぁ……これ、ほんとにザックスが作ったんだよな?お店で買ってきたりしたものじゃないんだよな?」
「お店の人はこんなに字汚くねーって」
やはりメッセージを書くのは至難の技で、店のと比べると、相当汚いと思う。
「すごい……」
(やばい、泣きそうなくらい嬉しい)
今までに。
こんな素晴らしい、こんな嬉しい誕生日を迎えたことが、あっただろうか。
「嬉しい……」
「喜んでもらえて嬉しかったよ」
「喜ばないわけないだろ……こんなにしてもらって……」
「いやぁ正直不安だったからさぁ〜」
怒ることはさすがになかっただろうが、「俺の誕生日なんてどうでもいいじゃん」とか言われたらどうしようかと思っていたのだった。
「そうだ、クラウドにプレゼント」
「え?」
プレゼントまで用意してくれたのかと、クラウドの瞳が驚きに染まる。
こんなに嬉しいことまでしてもらったのに、プレゼントまで……
「絶対にクラウドに似合う」
「………綺麗」
三日月に乗るような形で、青く澄んだマリンブルーが小さく輝いていた。
「月と、その青がクラウドみたいだと思って」
髪にも、その瞳にも、よく映える。
「………………」
ザックスが、自分を月だというのなら。
きっとザックスは、太陽だ。
「形違い?のおそろいなんだぜ」
「え?」
これの太陽バージョンがあったら、ザックスにすごく似合うだろうなと考えていたクラウドは、
そう言ってザックスが首にかけていたものを見た瞬間、息を飲んだ。
「それが太陽になって、マリンブルーがついた形かな」
―――やっぱり、自分の思ったとおりだった。
優しいオレンジの輝きが、ザックスによく似合う。
「すごい……似合う」
「そうか?クラウドのが似合ってるぜ」
「そんなこと……」
ザックスが、あまりにも自分のことを優しい、柔らかい瞳で見るから。
気恥ずかしくなって、クラウドは俯いてしまった。