〜無双竜〜

□〜夢の中の女性〜
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竜は商店街を歩いていた。カバンを肩にかけて、商店街を見回した。
商店街はテストの日でも雨の日でもいつも明るく活気がある。
「あーあ、土日以外は学校だなんてめんどくさいな〜。」
竜は愚痴をしながら商店街を歩く。
この愚痴は誰も聞いていない。
 ま、当たり前だけどね。
すると仲のよさそうな親子が手を繋いで歩くのが目に入った。
「今日は何がいい?ハンバーグ?それともカレー?」
「うーんと、うーんと…。全部!!」
「えぇ!?全部食べるの?」
「うん!!だってママのご飯全部美味しいもん!!」
「あらあら。ふふっ。」
そんな会話をしながら竜の横を通り過ぎていった。
「家族、かぁ…。」
皆が持っていて、竜にはないもの______。
それは、家族だった。
 五歳までの記憶がない竜には家族がいたのかも曖昧だった。
でも、母さんの声は覚えてる、姉さんの姿も覚えてる、兄さんの思いも覚えてる。
けど、父さんだけ分からない。ただ、さしのばした手の温かさは覚えてる。
 おかしな自分…。
覚えてるのに、覚えてない。
覚えてないのに、懐かしいこの想い。
自分のことなのに自分じゃないみたいな、この感覚。
「あーーー!!もう、暗いのはやめやめーーー!!あたしのキャラじゃないもん!!」
そんなことを叫びながら家まで一直線に走って行った。
 あ、もちろん人混みの中だからなかなか進まなかったけど…。
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