Mardock Blue

□Mardock awaking
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海賊麦わら一味が常に抱えるリスクの起因は船長ルフィのブラックホール並の食欲であった。
そのためいつ底をつくか分からない食糧をつなぐには、釣りは欠かせなかった。

「何だ、これ」

そして、その日出来れば美味い海王類を狙っていたルフィはあるものを釣った。
それは手のひらに収まるサイズの金の卵だった。

「なぁ、ウソップ。これ食えるかな?」
「絶対毒入りだぜ、止めとけよ…」
「よし、サンジに聞いてこよう!」
「人の話聞けよ!!」

共に釣りをしていたウソップに相談を持ちかけたものの、ルフィの底無しの食欲の疼きは治まらない。
ルフィがウソップの阻止を無視し、卵を手にキッチンへ向かおうとしたときだった。

手の中で卵がトクンと熱をあげた。
まるで小動物の心臓が脈うつような、微かなものだった。

その鼓動にも似た温もりにルフィはピンと感づいた。

「ウソップ、こいつ生きてる!!」
「ぎゃあぁぁ、絶対海王類の卵だ!!孵るぅぅぅ!!」


ウソップは途端にその身長大の巨大なパチンコ、カブトを構える。

「捨てろ!!今すぐ!!」
「止めろ!!こいつを孵らせてペットにするんだ!!」
「海王類なんてペットにできるかぁぁ!?」
「おれならできる!!」
「無茶いうな!!」

二人が卵をかけて揉め始めたそのとき、卵にひびが入った。

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
「生まれるぞ!!」

ウソップは途端に甲板の物陰に隠れ、
ルフィはキラキラと目を輝かせた。

そして、卵はその殻を弾けた。
まるで音のないクラッカーのように、金の殻がキラキラと無数の紙片のように宙を舞った。
きれいな光景だった。
物陰に隠れていたウソップですら、その光景にポカンと口を開けてみとれた。

卵の破片が甲板の草に散ったとき、
ルフィはまだ手の中に温もりがあることに気付いた。
それが卵の中身であることにも。
ルフィは手のひらを見た。

金色のネズミだった。
卵の殻にも負けない輝きで体毛が金色に輝いていた。

そのネズミは震えていた。
生まれたその世界を把握するためじゃない。

痙攣したように、その瞼をギュッと閉じて
まるで、苦しみに耐えるように。

「チョッパー!!」

ルフィは無意識のうちに、医務室に走り出した。
その手は、中の温もりを消えさせないように柔らかにネズミを包んでいた。
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