晴れ時々飴

□ホントのエース
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ホームランを打たれた後、廉はベンチに入ろうとはせずつらそうな表情でどこかへ行ってしまった。

入らないんじゃない。入れないんだ。

追いかけようと思いベンチから出ようとすると、同じように廉を追いかけている阿部。

今回はあいつに任せるか。


「三橋、ベンチ入らないね」
「入れねえからな」
「え?」
「あ、いや…」


栄口は心配そうに廉が去っていった方をずっと見ている。
栄口だけじゃない、きっと他の皆だって廉の事心配しているはずなんだ。

「1、2、3番!」

「はい!」

モモカンから呼ばれて、阿部がこっちにきた。
今のうちにちょっと廉のとこ行ってみるかな。



「さっきのヤツ目ーつぶってたな」

体育座りをしながら小さくなっている廉の隣に同じように座ってみる。

「う…うん」


いつも俺を見たら安心した表情をする廉も、今回ばかりはずっと下を向いたままだ。
顔、上げてくれないな…。

「阿部には言った?」
「ま…まだ…。」
「そっか」

そりゃ今はまだ怖くて言えないよな。ここに座ってるだけでもやっとだろう。


「廉はさあ…精一杯投げてんだろ?」

この言葉に廉はぱっと顔を上げる。顔が少し赤くなっていた。

「う…へ」

うん、精一杯投げてるんだよね。

「ベンチから見ててもわかるから」


だからここで崩れてほしくないんだ。
頑張れって言葉しか思いつかないのが情けないけど…
後ろ見れば皆いる、皆頑張ってる。

「あ…!」
「…?」

少しだけいつもの笑顔が戻っていた廉は何を見たのか一瞬で不安の表情に変わってしまった。
なんでそうなったのかは、廉が見ている先にある。


叶が投げた球が沖に当たりデッドボール。

ずっと…三星の事を考えてる。
戻りたいのか…?


一人ベンチに入らず三星の事をずっと考え続けている廉に何も言ってやれない……。
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