Gift

□君という贈り物
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「こちらから出かけるのって、初めてです」

裏口の桜も綺麗ですね、とほわりと笑う千鶴のほうがよっぽど綺麗だと、誰もが思いつつ、皆勝手口から外へ出た。

「でも、どうして裏口から?」

「それはね、千鶴ちゃん。いくら僕らがみんな非番でも、全員で出かけると、ブスブス口うるさーい人が居るからね。見つかると面倒くさいからだよ」

沖田の言葉にうんうん、と大きく頷く永倉と平助。

「総司、嘘を教えるな。如何に非番とはいえ、幹部が連れだって正面から出かけるのも、隊士達には如何なものかと…」

「もぉ…、一君ってば面白くないなぁー。それは建前でしょ」

「まぁまぁ、いーじゃねぇか。たまには違う道から出かけるのも楽しいよな、千鶴?」

「はいっ!なんだかワクワクしちゃいますね」

割って入った原田の執り成しに、千鶴がにっこりと笑顔で答えると、斎藤も沖田もまぁいいか、と首をすくめる。

今回の外出は千鶴の笑顔を見るのが目的なのだから。


事の起こりは数日前。

中庭の掃除をしながら、ぼんやりと落ちていく桜の花びらを眺めている千鶴を、眺めながら茶を啜っていた時の事。

きっかけは、永倉だったか、平助だったか誰かが「最近、千鶴が元気がない」と言い出した事から始まった。

その事は全員感じていたことだったから、誰も異を唱えることもなく、自然とその話題へと流れていき、そのうち、どうしたら元気になってくれるか、という話へなり、たどり着いたのが

『何か千鶴が喜ぶような贈り物をしよう』

だったのだが…


「…分からねぇ…」

何を贈れば、千鶴が喜ぶか、分からないのである。

男五人、散々悩んだ結果

『千鶴を買い物に連れて行き、本人が一番、欲しそうにした物を贈る』

という他力本願な結論に至り、今回の外出となったのである。
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