Gift

□梅雨
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「止みそうにねぇなぁ」

ポツリと呟かれた声に顔を上げると、窓の外を眺めている彼がいた。

外はここ3日ばかり雨が降り続けてる。

「珍しいですよね、こんなに雨が降り続くのって、梅雨はないって聞いてたんですけど」

ここ蝦夷地には、“梅雨”という時期がないらしく、この時期の向こうとは違い、纏わり付く空気もなく結構カラッとした空気で、過ごしやすい気候といえる。

なのに…

「あぁ…こう雨が続くと紙が湿気てしかたねぇ」

机の上にある膨大な書類を見ながら溜息をついている彼。

かくいう私も洗濯物が乾かなくて、ちょっと困り気味。

「こっちはな、本格的な梅雨の時期がない代わりに“蝦夷梅雨”つうもんがあるらしい」

「蝦夷梅雨、ですか?」

「あぁ、時々だが梅雨のようにこの時期に連続して雨が降るらしい。まぁ梅雨みたく月単位じゃぁないらしいがな」

そう言いながら、いきなり腕を引いて引っ張られ胸に抱きこまれた。

「土方、さん?」

微かに名を呼び顔を見ると、前は滅多に見ることがなかった穏やかな微笑が向けられていた。

「今日は、ずっとこのままでいるか」

耳元にいきなり囁かれて肩が跳ねた。

「どうした?」

さっきまでの微笑とは似ても似つかないニヤリとした顔で聞かれ、嫌な予感が頭をもたげた。

「ご遠慮申し上げますっ」

こんな顔をしているときは、いいことがあった試しがない。

「遠慮すんな」

そう呟いて、抱きしめる腕に力を込めて、キスの雨が彼から降ってきた。

外の雨は、続くと困りものだが彼からの穏やかな触れ合いとキスの雨はずっと続けばいいのにと思う千鶴だった。



ちなみに…

「ひ、土方さんっ、誰か来たらっ、離してくださいっ」

「今日は、このままでいるって、言ったじゃねぇか」

【やっぱり〜っ】

”このまま“と言った通りに千鶴を離す気がない土方は、大鳥が来ようと部下が来ようと千鶴を抱き込んで離さなかったのでした。
 

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