Short dream
□Trick or Treat -another-
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「マリー、トリック・オア・トリート」
『…あ…………』
パクパクと口を動かし、どう切り返そうか奮闘するマリーは、幼い頃のフィリップを見ているようで私の頬は緩んでいく。
『あ、あの…これじゃあ』
「それは今さっき私達があげたものだろう?貰った物を返すのはマナー違反だよ」
奥でセブルスがため息をつくのが聞こえる。
「私も甘いもの好きでね。お菓子を貰えたら一番なんだけど、ないなら仕方がないね?」
私は笑顔のままマリーに近づいて行く。
昔は良くフィリップに悪戯をしたりされたりしていた。
目の前にいるのは彼女でないことは重々承知している。
それでもやっぱりフィリップとして見てしまう。
『ぇ…え…っ』
私が一歩近づけばマリーは一歩下がる。
「ふふ」
こんな意味のない悪戯にも懐かしさのあまり笑顔がこぼれる。
『Σっ!』
私が近づいたことでマリーもその分下がり、マリーは扉に背中を預ける形になる。
セブルスは呆れたのか、一切口を出さない。
マリーがこれ以上下がれないことを良いことに私は顔を近づける。
『ぅ〜〜//』
私は口をマリーの耳に近づけ、
「冗談だよ」
と耳元で囁いた。
『っえ……』
「あははは!悪戯のつもりがそんなに怖がられると私も少し焦ったよ」
『あ、あの…リーマス…』
私はマリーから離れ椅子に座ってチョコレートを食べる。
「あまりにも良い反応を返してくれるからつい、ね」
『ぅ…びっくりしました…』
「はは、すまなかった」
セブルスは呑気に本棚にもたれかかり紅茶を飲んでいる。
『スネイプ先生も助けてくれないし……』
「セブルスは本当に危険だと思わなければ動かないからね」
「ふん」
私は鞄の中から円柱型の缶を取り出すとそれをマリーに渡した。
「それはからかい過ぎたお詫びだよ」
これは嘘で、最初からマリーに渡すつもりだったものだ。
『あ!私が好きなお店のクッキーだ!覚えてくれてたの?嬉しい!』
「それは何より」
あのクッキーはフィリップがとてもお気に入りのものだった。
彼女と一緒だったから覚えていた、というのが正直なところだ。
『ありがとう!じゃあね。スネイプ先生もありがとうございます!』
手を振り去っていくマリーに私も振り返す。
マリーのいなくなった扉を見つめる自分を嘲笑う。
「どういうつもりだルーピン」
「うん。少し、やり過ぎたね。学生時代を思い出してしまってね」
あの綺麗な瞳はフィリップと同じで、魅力的だった。
「顔も好きなものも同じなのに、やっぱり別人だったよ。反応は彼女とは違ってたよ」
「今更当たり前のことを」
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