賢者の石
□第6章
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一方で私は試合の後も続いた騒ぎの渦中にはいなかった。
ハリー達とは離れスネイプ先生の部屋にいた。
『ハリーにおめでとうの一言くらい言ってあげたらどうですか?』
「ふざけるな。次は一体何が起きる?」
苛立った口調で私に質問する。
『だから言わないって。でも、敵と見なさなければならない相手はもう分かっているのでしょう?』
「ああ」
『だったら己を貫いてそいつから目を離さないで』
スネイプはすっと眉を潜める。
「それは…正解と取って良いのだな、トビカイ」
私はゆっくり縦に首を下ろす。
『私は、もう少しあいつを泳がせるつもりです。早く止める事は可能な範囲内ですが、それでは意味がなくなってしまいますので』
ヴォルデモートを死滅に追いやるにはハリーの力が必要不可欠。
ハリーとの接触を避けてしまってはこの物語はきっと永遠に終わらない。
『大事なモノはなくさないから平気ですよ』
「………好きにしろ」
『勿論そのつもりですよ、センセ?…………でも、もしも辛くなったら、ここに来ても良いかな?』
「…ああ」
小さく呟いた弱音をスネイプ先生は聞き逃すことなく、素っ気なく答えてくれた。
少しだけ微笑んで私は部屋を後にする。
今頃ハリー達はニコラス・フラメルの事を知ったんじゃないかな。
これでハリー達も後戻りは出来なくなった。
もうすぐクリスマス。
みんなはクリスマス休暇が待ち遠しいようだった。
そんな事よりも日本、しかも都会に住んでいた私は日本よりも寒い気候に暖房もないヒーターもない生活に頭を悩ませていた。
突如この世界に来てしまった私はセーラー服で過ごしていたが、カーディガンもなしにこのイギリスの冬を過ごすのはキツイ!
私服とかは有り難い事にアルバスに用意して貰っているのだが、時々お姫様みたいにフリフリしたのをくれる。
着るたびにハーマイオニーは抱きついて来る。
嬉しいけどね。
そんな私は今ハリーの少し大きいローブを羽織って、ロンのマフラーを巻き、ハーマイオニーの手袋を着けてスネイプ先生の地下牢教室の熱い釜で暖をとっている。
こんな完全防寒でいるが今は遊びに来てる訳ではなく授業中だという事は一応言っておこう。
「ミストビカイ。何だねその格好は」
目をひくつかせてスネイプ先生が私のもとにやって来た。
『だ、だって、めちゃくちゃ寒いんですもん。魔法薬の調合中に鼻水が入ろうものなら大爆発ですよ』
「なら我輩が鼻にビーンズでも詰めてやっても構わんのだぞミストビカイ。マフラーは許そう。だが手袋は外せ。鼻水が入る前に調合が出来ぬだろう」
『はーい』
スリザリン生ですら言い訳出来ないスネイプに平気な顔で屁理屈を言う私を、隣のハリーはポカンと口を開けて見ていた。
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