Short dream

□こころ
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ハリー・ポッター。

この世界に僕の名前を知らない人はいないらしい。

だけど僕がどんな人間なのか知っている人は数少ない。

ホグワーツに来て僕を僕として本当に見てくれているのはほんの一部の人だけだと思う。

その中に君も含まれている。

マリーは生き残った男の子として初めから見ていなかった。

僕をひとりの人間として見てくれていた。

些細なことかもしれないが、とても嬉しかった。

優しくて、素直で、努力家で頭もよくて、何より笑顔がかわいらしい誰からも愛されるような人。

男も女もマリーが好きになる。

僕は大好きになった。

『ねぇハリー。お願いがあるの…』

「どうしたの?」

『ほ、箒の乗り方を教えてほしいの』

声を潜めて顔を真っ赤に染めてもじもじとしながらのお願いに思わず僕はクスッと笑ってしまった。

『だ、だめ…?そうよね、見てる方も怖いわよね…』

「い、いや。ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ。いいよ、もうちょっとしたら練習しに行こうか」

『ありがとう!談話室で待ってるね』

スキップでもしそうな勢いで走っていくマリーの後ろ姿に再び吹き出しそうになる。

僕は片付けないといけない荷物を片して、マリーが待つ談話室へ向かった。

窓から空を見上げるマリーに声をかけ箒をとって庭へ足を進めた。

先にマルフォイの姿がちらっと見え僕は咄嗟にマリーの手を握った。

マルフォイもまた、マリーに惹かれたひとり。

「おいポッター!お偉いポッターは箒を持ってどこに行くんだ?マグルの家に帰る準備かい?」

嫌味たらしく僕たちを見ているふりをしているが、マルフォイの目線は僕が握りしめているマリーの手に行っていた。

「どけよマルフォイ。僕が何をしようと勝手だろ」

「あぁ、確かに関係ないね。だけどお前の悠々自適な行動で怪我人が出るんじゃないかと思っただけさ」

マリーを一瞥して言う。

内心そんなこと思っていないのは明らかだったが、言われた本人は動揺を隠せていない。

「確か…恐ろしいくらいに箒に乗るのが下手なんじゃなかったかい?」

『そ、それは……』

もごもご口をまごつかせ、俯くマリーの頬はほんのり朱色だ。

「マリー、気にすることないよ。ほら、行こう」

俯いたままもじもじとしていたマリーの手を僕は引く。

麻衣が傷つくから逃げたんじゃない。

マリーは無自覚だが、マルフォイのことが好きになっていることを知っていたから、嫉妬心から逃げた。

『私……うまくなるから…』

マリーすれ違い様に小さく呟いたその言葉は紛れもなくマルフォイに向けられたものだった。

だけど、僕はまだ諦めない。


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