Short dream

□想いは君に
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私はシリウスが乱雑だが優しく巻いてくれたマフラーに顔を埋める。

『暖かいじゃんかバカヤロー』

マフラーからシリウスの温もりを感じる。

昔からよく知っている臭い。

いや、4年生くらいから変わったか。

獣臭がし始めたんだよね、動物もどきになってから。

そんなことどうでもいいのよ。

あいつは、シリウスは私のことをただの幼馴染みとしか見ていない。

『私はこんなに嫉妬深い女になってしまうくらい好きなのに……』

それでも望んでしまう。

あの瞳で私を見つめてほしい。

あの腕で抱き締めてほしい。

あなたを独り占めしてやりたい。

こんなに近くにいるのに遠くに感じる。

私の知らないあなたになっていくのが寂しい。

知らない女があなたといるのが嫌。

いつか私を忘れてしまうんじゃないかと怖い。

こんな自分勝手な考えを自分でも嫌になるくらい頭が勝手に流しだしてしまう。

本当に好きならシリウスが一番幸せになることを考えろよ、と我ながら突っ込みたくなる。

『…あぁ…寒い……とりあえず帰ろうかな』

このままじゃ本気で凍え死ぬことが脳裏をよぎり私は談話室に戻ることにした。

「マリーおかえり、って頭真っ白じゃない!」

『え?あぁ…雪が降ってたから』

風邪引いちゃうじゃない!とリリーが雪をはたいてくれた。(飛んだ雪がジェームズにかかってるけど)

「シリウスは?」

リーマスが背中も真っ白だけど気づいてた?と払い落としてくれながら言った。

『マフラーだけ置いて行っちゃった』

「はぁ…シリウスは鈍いくせして思わせ振りなんだよね。あいつが悪い」

よしよしとリーマスが私の頭を撫でる。

ジェームズが早く暖まりなよ、と暖炉の前に座らせてくれた。

「引き留めれば良かったのよ!」

『出来ないよ。引き留める理由もないし…』

しゅん、と心が沈む。

「そこは、ほら、目の前に寒さに震える仔猫ちゃんがいるのに抱き締めないのォオ!?って」

ジェームズが私のもの真似をしているのか少し高めの声でそしてオカマ口調で叫ぶ。

「気持ち悪いわよ!」

鳥肌が立つ!とリリーが殴る。

バカップルめ…。

「まぁでも、もうちょっと一緒にいてよくらい言っても良かったかもね」

『そんなことしても意味ないよ。シリウスには私なんて見えてないもん』

私より可愛くて、素敵な女の子はたくさんいるしシリウスにはそっちの方がお似合いだってことくらいわかってる。

「シリウスはバカだね。一番近くにいい女がいること気づいてないんだよ」

「シリウスのことをこんなに理解している人が他にいるかい?」

「そうよね。それに男女の幼馴染みが恋人関係になるのは鉄板だってことになぜ気がつかないのかしら!」

『リリー、それ何か違う…』

リーマス、ジェームズ、リリーがそれぞれ私のことを思い慰め、応援してくれている。

「とにかくマリーに悪いとこはないのよ!あいつが悪いとこだらけなのよ!」

『あははは…』

力なく笑った私をリリーは肩を抱き寄せて手を握ってくれた。

「うぃーす。何してんだ?」

シリウスがポケットに手を突っ込んでドスドスと帰ってきた。

ヒュン――ボフッ

「ブフッ!」

リリーが投げたクッションがシリウスの顔面にクリーンヒットする。

「何すんだよ!」

「知らないっ!」

「はあ?なに怒ってんだ、リリーまで」

シリウスは意味がわからないと暖炉で暖まるために私のすぐそばまで来た。

「来るなバーカ」

隣にいるリリーが私の肩をさらに強く引き寄せる。

「何でだよ?何があったんだ?」

『さ、さぁ?』

リリーにやたらと攻撃されるため私に聞いてきたが、話せるわけがない。

「マリーお前、これ…」

『あ、ごめん。ありがとね、シリウスだって寒かったのに』

ソファに掛けたマフラーをシリウスが気づき手に取る。

「びしょびしょじゃねぇか!」

『え?ごめん…雪で濡れちゃったのかな?乾かすわ』

「んなこといいんだよ。あれからどれだけ外にいたんだよ?」

シリウスは少し怒ったように私を見た。

マフラーを濡らしたことを怒っているのかと思ったが違うようだった。

『どれぐらい、かな……?15分はいたかも…』

「早く中に入れって言ったのによ…。人が心配して言ってやったのに」

シリウスの言葉に胸を打たれる。

『心配してくれてたの?』

「ん?そらそうだろ。マリーはそういう所あるし。言ったろ?幼馴染みなめんなって」

私のことはよくわかってると言いたいのだろうか。

シリウスが私のことをそんなに心配していたなんて思ってもみていなかった。

シリウスからすれば幼馴染みとしての思いなのかもしれない。

『そ、そっか…、ありがとう!心配してくれて。ちゃんと気を付けるね』

だけど、私は嬉しくてしかたがなかった。

常に私を気にかけてくれていたことが何よりも嬉しかった。

「おう。気ぃつけろ」

少しでも希望があるかもしれない、と。

だから、まだ続けてもいいよね?

――私の片想い




End
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