Short dream
□Trick or Treat -another-
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Trick or Treat-another-
「やあ、セブルス。久しぶりだね」
「何しに来たルーピン」
私はセブルスのきつい口調に苦笑いする。
「たまには直接お礼をしなきゃと思ってね」
「生憎、礼など言われる筋合いはないのでね」
「いいや。毎回、君の脱狼薬に助けてもらってるからね」
私はセブルスの了承を得るよりも前にソファーに荷物を置き、手土産を並べた。
「我が輩に礼を言うのは二の次であろう?」
「はは、バレていたか」
セブルスの鋭さにはほんとお手上げだ。
私の本当の目的はマリーに会うことだ。
私の初恋の人、フィリップの一人娘。
フィリップは不慮の事故ですでに他界していて、私は彼女の面影を今でも追って、彼女の娘であるマリーに執着している。
我ながら面倒な男だ。
「直接##NAME3##を訪ねれば良かろう」
「言い訳が必要なのだよ、心の弱い男にはね」
私の心が弱いばかりに、マリーにはとても失礼なことをしている。
私はマリーをマリーとして見ずに、瓜二つのフィリップの面影を写している。
娘とは言え、彼女とは別の存在なのに。
「お前の気を知らずにお前を慕っている##NAME3##が哀れだな」
「……申し訳ないと思っているよ」
――コンコン
扉をノックする音が部屋に響く。
「入れ」
セブルスが返事をすると扉が開き、噂をすれば影…とでも言うようにマリーが顔を覗かせる。
『スネイプ先生!トリック・オア・トリー…いと………リーマスだ!』
部屋に入って来たマリーは私を見つけると満面の笑みを浮かべ、私に抱きついた。
“この子がフィリップだったら”
『リーマスにもトリック・オア・トリート!』
マリーの声に頭に浮かんだ悪い雑念を慌て振り払う。
「久しぶりだねマリー。はい、お菓子だ。ほらセブルスも渡さないと悪戯されるよ」
自分自身を誤魔化すようにマリーにポケットに入れていたお菓子を渡す。
「ここにある。好きに持って行け」
セブルスは私が先ほど置いたお菓子を指差す。
『わ…意外だったわ』
「悪いね。私がさっきセブルスに差し入れで持って来たんだよ」
きっとセブルスに悪戯をするつもりで来たのだろう。
フィリップも悪戯心の少なくない人だったから、そんな気がした。
「ふん」
『まぁいいや、お菓子貰えたし。それじゃ、さようなら』
「マリー」
せっかく久しぶりに会えたマリー。
いやフィリップの子。
簡単に帰したくはなかった。
『はい。なーに?』
「トリック・オア・トリート」
振り返ったマリーに定番のセリフを言う。
『…あ………』
やられた、とでも言いたげな顔に私の中の少年心が蘇る。
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