賢者の石

□第1章
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「はぁ、はぁっ……!遅刻しちゃう!」


食パンをくわえて学校への道のりを走る私。


「何で起こしてくれないのよ!ママのバカァア!」


息も切れ切れ目に涙を溜めながら角を通り過ぎようとすると、


ドンッ―!



「きゃあっ!」


「ごめんなさい!大丈夫ですか?」


「……ス・テ・キ…♡」













『なぁんて事がある訳なかろーが!!』


「凌羽またそんなの読んでんの?飽きないわね〜」


『まぁこの世の中、現実逃避くらいしないと生きて行けないよ〜』


「のわりに否定するのね」



『痛いとこつくねトモちゃん……ふふっ』



中学に入学してから仲良くなったトモちゃんと2人して笑いあう。



あんなロマンチック(?)な出会いがあるわけないと百も承知。

でも、何ていうか人それぞれ思い描くシチュエーションがあると思う。


まぁ私は食パンをくわえるような真似はしないが。

ていうかぶつかったあと、地面に虚しくも落ちてしまったパンの気持ちはどうなる。

勿体ない!


そんなわけで私にこのシチュエーションは向いていない。





「さて、帰りますか」


『そだね。今日は学校終わるの早く感じるなぁ』


「それはあんたが1日中マンガ読んでるからよ!勉強しろ勉強!」


『あはは…』



いつもみたいに下らない会話で盛り上がり、あっという間にトモちゃんと分かれる道まで来た。


「じゃあまた明日ね〜」

『バイバイ!』


まだ話したりない気持ちを残しつつ1人で家路につく。



『ふぁあ〜(家帰ったら寝よう)』


大口を開けて欠伸をする。

ふと塀の上を見ると鋭く目を光らせた黒猫と目が合う。


その猫は器用に塀の上から飛び降りると私の前を横切り歩いて行ってしまう。


『(うわ、黒猫に横切られた!悪い事起きそー)』


猫は細い路地に入って行く。



『あれ?こんなとこに道が在ったっけ?』


好奇心が煽られた私は黒猫の後をつけて行く。







『ありゃ。見失っちゃった……仕方がない、帰るか』



クルリと踵を翻すと来た道を戻る事にした。











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