Short dream
□こころ
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僕のうちは金持ちだ。
それなりの権力もあるし、何よりも魔法族の中でも高貴な純血家系だ。
父上の力をもってすれば手に入らないものなどひとつもなかった。
この服も、靴も、箒もすべて。
なのにたったひとつだけ手に入れられないものがある。
゛マリー・フィリップ゛だ。
ありきたりな発想だと思っただろう?
だが、そんなバカみたいな考えが普通に浮かんできてしまうほど欲しくてたまらない、僕だけを見てほしい。
今日もお前は僕のいないところで元気に遊び回り、楽しそうに笑い、真剣に授業を受けているのだろう。
僕の側にいて僕だけに微笑んでいればいい。
なのにうまくいかない、できない。
それはお前がグリフィンドール生だからなのか?
グリフィンドールとスリザリンは確かに敵対している。
気に食わない奴だらけだ。
特にあの有名人気取りのポッターはな。
またどうでも良いことで口実を作りマリーに近づくんだ。
だからって敵対しているスリザリンの僕が割り込んで二人を引き離そうとしてもうまくいかない。
スリザリンの生徒に選ばれたことは誇りではあるが、これだけに関してはマイナスポイントだ。
チッ、ポッターめ、またマリーを連れ出して何をするつもりだ。
「おいポッター!お偉いポッターは箒を持ってどこに行くんだ?マグルの家に帰る準備かい?」
僕はポッターとマリーの前に立ちはだかった。
ポッターの右手には箒、左手は一回り小さな手を握っている。
「どけよマルフォイ。僕が何をしようと勝手だろ」
「あぁ、確かに関係ないね。だけどお前の悠々自適な行動で怪我人が出るんじゃないかと思っただけさ」
僕はポッターの背に隠れ気味のマリーを一瞥して言った。
「確か…恐ろしいくらいに箒に乗るのが下手なんじゃなかったかい?」
『そ、それは……』
もごもご口をまごつかせ、俯くマリーの頬はほんのり朱色だ。
君に対してそんなことが言いたい訳じゃない。
だが、天の邪鬼な僕の口はいらない言葉を悩みもせず考えもせずペラペラと紡ぎ出していく。
心配しているんだ、その言葉が言えない。
「マリー、気にすることないよ。ほら、行こう」
うつむいたままもじもじとしていたマリーの手をポッターがくいっと引っ張り僕の横をすり抜けて行く。
『私……うまくなるから…』
すれ違い様に小さく、しかしはっきりと聞こえたその言葉。
深意はわからないが僕の心を揺らがせるには十分だった。
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