賢者の石

□第10章
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ハグリッドがノーバートに別れを告げる時がやってきた。

ハリーは私に透明マントには2人しか入れないから、リョウはロンと残ってと言った。

しかしハリーとハーマイオニーだけで行かせるつもりもなかったし、私だってちゃんとノーバートとお別れしたい。

そこで私は消灯時間が来る前にニンバス2000に跨がり一番高い天文台まで舞い上がった。

天文台の片隅で私はひっそりと零時を待った。

…勿論、ハリー達には内緒で。

ハリーには悪いが、この機会を逃しては折角のヴォルデモートとの接触を逃す事になる。



随分暗くなってきた。

少し肌寒い……

てゆうか…少し、



怖い…!!



『ぁあ…ハリー早く来てぇ〜…』

授業以外の出入り禁止のここに、ましてや消灯時間を過ぎたこの時間に私以外の人がいる訳なくなんだかすごく心細い。


ガタッ

衣の擦れる音と一緒に聞こえた木箱を床に置く音に膝を抱えて座っていた(所謂体育座り)私はバッと立ち上がる。

ハリーとハーマイオニーが来たのだ。

透明マントを脱いだのを確認して私は2人の前に姿を表した。

「……!」
「ぅむん〜……!」

あわやハリーが声をあげかけた。

私は慌ててハリーの口を塞いだ。

『ハリー、私よ』

私だと気づいたようで首を縦に振って見せた。

私は静かにハリーの口元から手を退ける。

「リョウ!?どうしているの!?」

「そうよ。リョウはロンと待っててって…」

『2人だけで行かせられないよ。それに、私がこんな楽しそうな事見逃すと思う?』

私が胸を張って言うと、2人はクスクス笑った。

「そうね。リョウはスリルのある事好きだものね」

「怖がりのくせにね。よく1人でこんな暗いとこにいれたね。怖くて泣いてたんじゃない?」

『な、泣いてないもん!』

小声ではありながら、私は必死に弁解を図った。

だって…確かに怖かったけど、泣いてはなかったもんね。

それでもハリーとハーマイオニーにクスクス笑いわかったわかった、と軽くあしらわれた。

恥ずかしくて顔に熱がこもった。

「そうそう、さっきマルフォイが罰則を受ける事になったのよ!」

ハーマイオニーが楽しそうに言った。

ハリーもすごく嬉しそうにクスクス笑った。

「歌でも歌いたい気分よ!」

「歌わないでね」

すかさずハリーが忠告した。

ノーバートが箱の中でバタバタ暴れていた。

私はしっかり蓋のされた箱に近づき声をかけた。

『ノーバート、私の事忘れないでね』

ノーバートの姿が見えないのが残念だが、ノーバートはガタタと箱を揺らし小さく寂しそうに声をあげた。

『ああ!ノーバート、寂しくなるわ!』

私は思わず木箱に抱きついた。

中からくぅーん…とまるで子犬のような声が聞こえ、ノーバートと別れるのがもっと嫌になった。

「本当、ノーバートもリョウにだけは懐いていたものね」

「さっきまで暴れていたのが嘘みたいだ」

ハリー達が来てから10分ほど経っただろうか。

4本の箒が暗闇の中から舞い降りて来た。

チャーリーの友人達は陽気な仲間だった。

4人でドラゴンを牽引出来るよう工夫した道具を見せてくれた。

7人がかりでノーバートをしっかりとつなぎ止め、ハリーとハーマイオニーと私は4人と握手し、礼を言った。

『ノーバート、元気でね。良い子でいるんだよ』

ついにノーバートは出発した。

チャーリーの友人達の姿が見えなくなるまで私達は見送った。

私達は螺旋階段を滑り下りた。

私のニンバス2000とハリーの透明マントを塔の上に置いたまま………。






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