賢者の石
□第9章
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それから何週間か経った。
4階の廊下を通るたび、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人は扉にピッタリ耳をつけて、フラッフィーの唸り声が聞こえるかどうか確かめた。
「ハーマイオニー、試験はまだずーっと先だよ」
“賢者の石”の事よりもハーマイオニーは試験のほうがよっぽど興味深いに違いない。
学習予定表を作り上げ、ノートにはマーカーで印をつけていた。
そして私達にも同じ事をするようにしつこく勧めてきた。
「10週間先でしょ。ずーっと先じゃないわ。ニコラス・フラメルの時間にしたらほんの1秒でしょう」
ハーマイオニーは厳しい。
「僕達、六百歳じゃないんだぜ」
ロンは忘れちゃいませんか、と反論した。
「それに、何のために勉強するんだ?君は全部知ってるじゃないか」
「何のためですって?気は確か?二年生に進級するには試験をパスしなきゃいけないのよ。もう一月前から勉強を始めるべきだったわ」
『…むぅ〜〜〜っ!!っんばぁ!もう無理。ダメ。私の脳みそ破裂。腐った。溶け出した。カッスカスだコノヤロー』
教科書とにらめっこしていた私は息を一気に吐き出す(無意識の内に息を止めていた)と机に突っ伏した。
「ほら見ろ、使わない頭使わすからリョウが壊れた」
『ロン、それ悪意が籠もってる』
「…リョウ、目が死んでる」
意気粗相も良いところ、私の思考回路は見事に遮断してしまった。
しかし、そう言ってはいられなくなった。
先生達が山のような宿題を復活祭(イースター)の休み前に出したのだ。
私とハリーとロンは自由時間のほとんどをハーマイオニーと一緒に図書館で過ごし、勉強に精を出した。
「こんなのとっても覚えきれないよ」
とうとうロンは音を上げて羽根ペンを放り出した。
ちなみに私は一角獣(ユニコーン)の角について紙に書き、暗記していた。
私は何度も書いて覚えるタイプなのだ。
だが、3日も経てば忘れてしまうのがこの勉強方法のマイナス点だと思う。(私だけか!?)
「ハグリッド!図書館で何してるんだい?」
ロンの声につい手を動かすのを止めてしまった。
「いや、ちーっと見てるだけ」
現れたハグリッドはモールスキンのオーバーを着ていて、いかにも場違いだった。
声が上擦っているおかげで、あっという間に私達の興味がハグリッドへ集中する。
ハグリッドは自分の大きな背中に何かを隠しているようで、あからさまにもじもじとしている。
「お前さん達は何をしてるんだ?」
ハグリッドは急に私達を疑わしげに見た。
「まさか、ニコラス・フラメルの事を…」
『フラメルならもう見つけたー』
ね?と言えばロンは意気揚々と言った。
「あの犬が何を守っているかも知ってるよ。“賢者のい――”」
「シーッ!」
しかしハグリッドは人差し指を口に宛て、急いで周りを見回した。
「この事は大声で言い触らしちゃいかん。お前さん達、全くどうかしちまったんじゃないか」
「ちょうど良かった。ハグリッドに聞きだい事があるんだけど。フラッフィー以外にあの石を守っているのは何なの」
ハリーが聞いた。
「シーッ!いいか――後で小屋に来てくれや。ただし、教えるなんて約束は出来ねぇぞ。ここでそんな事を喋りまくられちゃ困る。生徒が知ってるはずねーんだから。俺が喋ったと思われるだろうが……」
「じゃ、後で行くよ」
ハリー頷き答えた。
そしてハグリッドはモゾモゾと図書館から出て行った。
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