短編
□本当にいいんでしょうか
1ページ/1ページ
私は台所の上の棚からミキサーの箱を取り出すと、それにふっと息を吹きかけて軽くほこりをはらった。
冷蔵庫の野菜室から昨日実家から送ってもらったゴーヤやらほうれん草やらとりあえず緑の野菜だけを取り出す。
青汁なんて作った事無いからなー…
昔一度使ったきりで長い間箱にしまわれていたミキサーを取り出しながらぼんやりとそんな事を考える。
軽く水洗いしたミキサーをタオルで拭いて机の上に置くと、野菜を手に取った。
ゴーヤを丁寧に水で洗い縦半分に切ってから、種とワタを取り除くとミキサーに入れた。
他の野菜も簡単に下処理を済ませて、ミキサーに入れる。
そしてピ、とスイッチのボタンを押すとあっという間に混ざって液体状になった野菜。
私はそれをコップに移すと押入れがあるリビングへと向かった。
「ニガイトー」
「…」
先ほど作った青汁を手に持ち、押入れに声をかけてみたものの反応は無い。
一旦青汁を机の上に置き、少しだけ襖を開けるとそこには体育座りをしたままぼんやりと前を見つめているニガイトの姿があった。
「ニガイト、青汁作ったから出ておいで」
ちらりと襖の隙間から青汁の入ったコップを見せるとニガイトは少しだけこちらに顔を向ける。
お、反応あり?
「どうしたんですか…それ…」
「昨日実家から野菜が届いたから作ってみたの。出てきて一緒に飲もう」
ね?と私が微笑むと、ニガイトは少しだけ驚いた顔をした。
そしてゆっくりと押入れから出てくる。
長い事押入れにいたせいで目が明るさに慣れないらしく、目を擦るニガイト。
「こっちおいで」
「…はい」
私はテレビの電源を入れソファに座ると自分の隣りをぽんぽんと叩き、ニガイトを座らせた。
「…苦い」
「美味しいですよ」
一口飲んで眉間にしわを寄せる私とは違い、ニガイトはそれを涼しい顔で飲み干した。
未だコップに残っているそれをニガイトに差し出すと、私はテレビに目を向ける。
「あの…名無しさんさん、これ…」
「ん?ああ、飲んでいいよ」
何か言いたそうにしているニガイトにそういうと、私は再びテレビに視線を移した。
本当にいいんでしょうか。
(そうじゃなくて、あの…)
(うん?どうしたの?ニガイト)
_____
間接キスのお話。