短編

□stop!
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「あー…頭痛い…」
「よー、名無しさん。わざわざ見舞いにきてやったぞー」

熱を出して苦しんでいる私のところにマタタビがやってきた。何故か綺麗な林檎を手に持って。


「ちょっと待て。どうやって家に入った?」
「鍵開いてたぞ」

ん、と林檎を差し出したマタタビ。
私が受け取らないのを見ると、林檎を机の上に置く。つか、その林檎はどこから持ってきたんですか、マタタビさん。


「随分と辛そうだな」
「見りゃ分かるでしょ。うつらないうちに早く帰って」

ああもう本当に頭がんがんしてきた。熱も上がった気がするー…。


「何やってんの」
「いや、林檎食わせてやろうと思って…」

懐からおもむろに包丁を取り出して、林檎を切ろうとするマタタビ。
そのマントって本当に色々と出てくるのね
ってそうじゃなくって、いいから早く帰ってくれないかな。


「駄目だって、包丁は。万が一の場合を考えて大人しく帰って」
「…」

困ったようにしばらく包丁を見つめたあと再び懐にしまう。よし、さあ、フジ井家におかえり。


「…何してんの」
「だから林檎を…」
「それはさっき聞いた。何で林檎一口かじって顔近付けてくるの」

頭痛の種が増えそうだ。どうしたらいのかしら、このトラ猫。


stop!

(でもせっかく…)
(いいから早く帰れ!)

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