短編
□恥ずかしくて
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「ガリ…レオ?」
「おい!何で疑問形なんだよ!この中では俺が一番一緒に過ごしてる時間が多いのに!」
「ごめん、いっつも『ガリー』って呼んでるから正確な名前覚えてないんだ」
人の名前を覚えるのが苦手な私をどうにかしようと、ガリハバラの皆が集まって一生懸命私に皆の名前を覚えさせようとしてくれていた。
私の発言に傷ついたらしいガリレオは隅の方に座ってのの字を書いている。
「じゃあ私の名前はわかるかしら?」
コト、と目の前に薄く湯気が出ているコーヒーを置きながら気品漂う女性がそう言った。
私はそれを受け取るとコーヒーを少し飲んでから隣に座ったその人を見つめる。
「キュリー夫人ですよね。いつもお世話になってます」
「あら、正解」
にっこりと微笑むキュリー夫人につられて私がにっこり微笑むと、その隣に座っていた番長風の人が身を乗り出してきた。
「じ、じゃあワシの名前は?」
「んー…ヘルツさん」
かな?、と私が言おうとした時その人はよっしゃぁぁ!と叫びながら飛び出して行ってしまった。
「私間違えちゃいました?」
「いいえ、正解よ」
「よかった」
再びコーヒーに口を付けながらキュリー夫人に聞いてみる。
間違いではなかったようなので私は胸をなでおろした。
飛び出して行ってしまったヘルツさんはしばらく待っても帰ってくる気配が無かったので私は空席の隣りに座っていた人に目を向けた。
「んー、林檎ちゃん…今日の君もまた一段と美しいねぇ…」
「…」
片手に持った林檎をうっとりした眼差しで見つめるその人。
私はその人の顔を見ながら一生懸命頭を捻って考えたが、その人に関する情報で「林檎」以外は私の頭の中では該当しなかった。
「…林檎の人」
「その名前も素敵だけれど、僕の名前はニュートンだよ。名無しさんちゃん」
はい、と先ほどまで見つめていた林檎を差し出してくれるニュートンさん。
受け取ったはいいもののどうする事も出来ない林檎をカップの横に置いてニュートンさんの向かい側に座って…
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